幸福はお金で買うことができる
アメリカの最貧困層(年収3000ドル未満)の内、自分が「とても幸せだ」と言う人は1/4以下である。一方、最富裕層(年収15000ドル以上)の半数近くが「とても幸せだ」と自己申告しており、その割合は最貧困層の2倍であった。裕福な人たちは貧しい人よりもずっと幸福である。
しかし、金持ちが貧乏人よりもずっと幸せだという証拠はあるが、すべての人の収入が増えたからといって、すべての人が幸せになる訳ではない。20世紀後半、アメリカ人の平均収入や1人当たりの実質GDPは毎年増えているが、国民全体の幸福度は、経済成長に伴って上がっていない。
幸福度は自身の収入だけでなく、他人の収入にも左右される。隣人の収入が増えることは、自身の収入が減ることとほぼ同程度のマイナスの影響をもたらす。つまり、幸福をお金で買うことはできるが、自分に関わる他人の収入が高ければ高いほど自身の絶対的な収入では満足できなくなる。
お金で買えないものの値段
人間関係が幸福度にもたらす影響を金額換算すると以下のようになる。
独身の人が最近結婚した人と同じくらいに幸せを感じるための収入:年43万円
1年間友人や親戚に会わない人の幸福度を埋め合わせるための収入:年49万円
子供が生まれた最初の年の満足度を得られる収入:年31万円
離婚した最初の年の精神的苦痛を埋め合わせるために必要な収入:年98万円
配偶者の死を埋め合わせる値段:3800万円
子供の死を埋め合わせる値段:1500万円
幸福、不幸に慣れるまでの時間
人間には慣れという特性があるため、幸福に永遠に影響を与えるものは存在しない。人生で起こることはすべて、いい事も悪い事も、永遠には続かない。
・失業
失業した人の幸福度は最初の年に急激に下がる。その後、どれだけ時間が経っても失業前と同じ値になることはない。
・離婚
離婚の苦しみから立ち直るには、男性2年、女性3年
・配偶者の死
配偶者と死別した傷が癒えるまでには、男性4年、女性2年
・結婚
結婚によってもたらされた喜びに完全に慣れるまでの平均時間は2年。
・子供の誕生
人は子供を持つ数年前から幸せになり、幸福は子供が生まれた年にピークを迎える。そのプラスの影響は1年以内に完全に消える。
人間は、新しい人生の出来事に遭遇すると、次のプロセスを経る。
注目→反応→説明→順応
長い時間をかけて、その出来事を理解できたら、それにさほど注目しなくなるので、順応して慣れることになり、感情的反応も弱くなる。
そして、人はマイナスの感情より、プラスの感情の方にずっと慣れやすい。これはプラスの出来事は考えるように促されない限り、起こった後は注目する必要がないからである。