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2012/04/26更新

効率と公平を問う

220分

8P

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効率性と公平性はトレード・オフ

経済学は、効率性と公平性という2つの評価軸を持っている。効率性は「限られた資源をいかに効率よく配分するか」、公平性は「社会で生まれた所得をいかに公平に分配するか」という観点である。2つの概念はトレード・オフの関係にあることが多い。

効率性とは異なり、人々は公平性も追求する。人はリスクを回避したいという思いを持っており、社会全体の格差の存在を否定的にとらえる。

効率性と公平性のどちらを重視するかという問題は、「大きな政府」と「小さな政府」のどちらを志向するか、という問題に置き換えられることが多い。日本は給付と負担のバランスをとっておらず、高給付、低負担という無責任な選択を続けてきた。
しかし、少子高齢化・低成長の時代が続くと、その持続は難しくなり、私たちは効率性と公平性の間の厳しいトレード・オフに直面することになる。

所得・生活水準が低下し、また、低下すると見込まれる場合ほど、私たちは格差拡大を認識し、それを問題視する傾向がある。実際には所得格差は拡大傾向にはないにも関わらず、実感として格差拡大を強く意識している。

所得格差の是正は若年層から高齢層への所得移転に過ぎない

日本の所得再分配は、そのほとんどが年齢階層間の所得移転という形をとっている。そのため「困っている人を困っていない人が助ける」という形になっていない。その結果、高齢層や若年層のいずれにおいても、再分配の恩恵を受けず、貧困リスクに直面している人たちが少なくない。
この問題は、特に非正規労働者、低所得層に顕著である。社会保険料負担は逆進的になっており、低所得者層向けの支援と組み合わせて見直す必要がある。

世代間格差をめぐる問題はゼロサム・ゲーム

公的年金には世代間格差がある。すべての世代を同時にハッピーにする政策は不可能である。現在の高齢世代の給付を削減しなければ、若年・将来世代の経済的な便益は高まらない。

社会保障はそもそも、自分の子供の変わりに社会全体の子供に老後の面倒を見てもらう仕組みである。そのため、人々の子供に対する需要を減少させ、それによって自らの財政基盤を弱めてしまう「自己破壊」の性質を持っている。
現在の社会保障給付を維持しようとすれば、若年世代の負担を高めるしかない。しかし、若年世代も高齢世代と協調し、給付を引き上げる一方で、負担を据え置き、将来世代に先送りしている。

こうした危機的状況から抜け出す方法は、人々に将来世代に対する利他的な思いを強めてもらい、自らの利益の追求を弱めてもらうことである。しかし、人々の考え方を政策によって利己主義から利他主義に転換することは簡単にできそうにない。