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俺はこのままでいいのか?

著者の人生の転機は、いつもそんな自問自答から始まっている。大学を卒業して、第一企画(現ADK)という広告代理店に入社した。配属された先はテレビ部。早速テレビCM制作をやれると思っていたら、そこはテレビのCM枠を売るという「営業畑」の仕事場だった。

無理を承知で、担当取締役の家に直談判しに行って転属をお願いした。もちろん聞き入れられる訳もなく、悶々と仕事を始めることになった。腐りそうになり、会社を辞めようとしていたのを思いとどまらせた言葉がある。
「君が一人で行きたい、行きたいと言ってもダメだよ。『あいつはやっぱりクリエイティブにいったほうがいい』とみんなから言われるような仕事をしなさい」直談判に行った時の取締役の言葉が支えとなった。

自分のやりたいことをするには、プレゼンスを上げ、人から認められねばならない。事あるごとに社内でプレゼンをしまくって、自分という存在や能力をアピールし、制作の仕事を任せてもらえるようになった。

じゃ、やってみれば

クリエイティブ部門に異動してから12年、「自分にとって人生って何?」と考えた時、会社での自分の進む限界がわかってしまった。安定した職を失う事への不安はあった。しかし、会社を辞めて独立して、その後60歳になって仮にタクシーの運転手をしていても、それでいいと思った。「じゃ、やれよ」「やってみれば」と。とにかく自分の可能性を試してみたかった。

第一企画を辞めて独立し、CMプランニングをする小さな会社「ROBOT」が誕生した。ROBOTを創業した時、ラッキーだったのはクライアントがついてきてくれたことだった。

しかし、CM業界の将来に対する不安はあった。その不安を解消する手掛かりが、会社のブランディングだと考えた。そんな時、たまたまROBOTが作ったあるテレビCMの映像の一部を映画『水の旅人 侍KIDS』に使いたいと依頼を受けた。映画は会社のブランディングになる。その後、岩井俊二監督からの相談を受け『Love Letter』がヒット。予算オーバーし、ビジネスは赤字であったがブランディングとしては大成功となった。

ヒットの方程式はない

映画の場合、100%成功する法則性はない。絶対的な答えがない世界で、いかにヒットの確率を上げていくか。それにはまず「自分が面白いと思うもの」、そして映画を通じて「世の中に伝えたいメッセージを込められるか」が大きなポイントとなる。そのためには、はずれるリスクはできるだけ減らしつつも、時にはリスクを冒してでもやり抜く。

作り手の想いを伝える情熱があるかどうかで映画の質は変わってくる。それが映画を作る側の「哲学」である。