評判をマネジメントせよ
業種の別を問わず、企業のCEO達は、経営課題の最上位に「人材」と「評判」を位置付けている。しかし、大半の企業は「評判管理」の構築に立ち遅れている。評判に関しては、せいぜい広報部が不十分な予算で取り組んでいる程度に過ぎない。これではやがて「評判の危機」に直面することになる。
評判の危機には、必ず、複雑な判断が伴う。まず、顧客を安心させる必要がある上に、技術的な問題、サプライヤーや社員との関係、あるいは規則や法律に関わる問題など、複雑な問題の数々がのしかかる。
従って、危機におけるリーダーシップの第一の任務は「事業に関わる問題」の見極めとなる。最も重要なことは、失敗の責任の所在でも法的責任の範囲でもなく、自社のビジネスモデル、ブランド、顧客などの利害関係者との関係に、この危機がどう影響するかを把握する事である。
信頼回復に必要な要素
評判の危機管理において「信頼」の回復は最大の問題となる。顧客や他の利害関係者と信頼を築き、維持する上で最も重要な要素は、次の4つである。
①透明性
透明性とは、知り得た情報を全て公開することではない。多くの場合、プライバシーや企業秘密の保護などの理由から、全面開示は不可能である。
透明性が損なわれるのは、相手が情報の意図的な隠匿を感じ取った場合である。にべもない「ノーコメント」がこれに当たる。経営者は、この言葉に相当な代償が伴うことを認識しなければならない。
透明性の達成には、自分が知っていることと知っていないこと、そしていつ追加報告ができるのかを相手に伝えることが良い方法となる。その際「相手に理解される」ことが大切である。
②専門能力
組織としての能力を信じてもらえなければ、信頼は得られない。「私たちは状況を把握しており、専門家チームが問題解決に当たる」という対応が必要である。
一部の例外的ケースを除き、企業には十分な能力があると見なされる。従って、その見方に沿った行動をしないと、一般的に企業はその能力を使おうとしていないと受け止められるので、注意が必要である。
③コミットメント
コミットメントには、問題に対処していることを知らせる意味がある。コミットメントを示す最も強力な方法は、経営トップが乗り出して指揮を執ることである。それによって、説明責任が示され、この危機の解決を最優先しているというメッセージが送られる。
④共感
共感は謝罪とは別物である。謝罪が共感を表すということもあるが、形式的で不誠実な謝罪は逆効果となる。被害者に対して、リーダーが真摯な姿勢で温かく接すれば、謝罪の有無に関わらず、その効果は大きくなり得る。