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2012/04/03更新

階級都市: 格差が街を侵食する (ちくま新書)

192分

3P

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格差社会は街も変えた

経済的な格差が拡大する前後では、街の風景が変わった。小さな木造住宅と町工場が混在する、昔ながらの下町風景が多くの地域から消えてしまった。

1990年頃から、都心に近い地域を中心に、下町の景観が大きく変わっていく。町工場が取り壊され、低層の建物ばかりだった街に、中高層のマンションが建ち、サラリーマン家庭が入居した。

零細企業の経営者とそこに勤めるブルーカラーの労働者が元々住んでいた下町に大企業に勤めるホワイトカラーの新中間階級が、マンション住民として入り込む。二つの集群の関係は、古い低層の木造住宅群と、そこから空に向って突き抜けた鉄筋造りのマンションという空間構成に、はっきり示され、街の景観そのものが、階級構成を表現することになった。

階級都市

東京都の中心部と周辺の市街地は、「下町」と「山の手」に大別される。江戸時代には、下町が町人の町であるのに対して、山の手は武士の町だった。近代に入ると、下町は労働者や自営業者など庶民の町となり、山の手は裕福な中産階級以上の人々の町となった。両者の間には階級の違いがあり、経済的な格差があった。

関東大震災以後は、こうした傾向をさらに加速させた。特権階級や新中産階級、下町の富裕層の一部は西の杉並や世田谷へ、労働者階級は隅田川の東の奥、北の荒川・葛飾などへ住処を広げていった。

下町と山の手の格差は、各種の経済指標を見れば、明らかである。

・課税対象所得
最も高いのは港区623.8万円。これは23区全体237万円の2.63倍にあたる。逆に最も低い足立区は154.5万円である。所得額が高いのは千代田、中央、港、渋谷の4区でいずれも23区全体の1.5倍を超える。次いで山の手の文京、目黒、世田谷の3区は1.2倍を超える。これに対して低いのは下町で、墨田、北、荒川、板橋、葛飾、江戸川の7区で23区全体の0.8倍を下回る。

・大学・短大以上の学歴を持つ住民比率
最高は世田谷区51.2%、最低は足立区23.8%

・生活保護率
最高は台東区3.78%、最低は中央区と世田谷区0.72%

・2006年度の学力テストの中学校国語の平均点
最高は千代田区76.3点、最低は足立区で65.5点

・男性の平均寿命
最高は練馬区81.2歳、最低は台東区76.7歳

あらゆる指標で、豊かな都心4区、相対的に豊かで高学歴な山の手、すべてにおいて豊かさから取り残された下町という序列が見出される。ここから住民の平均寿命や、子供の成績と進学率などにも、深刻な格差が生み出されている。

大きな格差は、子供たちを中心に機会の平等が失われ、格差が固定化し、貧困連鎖が生じてしまう。低所得層へは、ハンディを埋めるため個別の家賃補助が必要である。