リアルフリーとは
「リアルフリー」とは、リアル(現実)の世界で、フリー(無料化)戦略を採ることである。
当時のエステ業界は、大手のエステサロンチェーンががっちり市場を固めており、顧客を奪い合う「レッド・オーシャン」であった。ここに著者は「リアルフリー」戦略を持ち込み、会社を8年で売上200億円までに成長させた。
足元の「レッド・オーシャン」をよく見つめると、その奥に「ブルー・オーシャン(競合のいない未開拓な市場)」が広がっているというケースがある。
リアルフリーが成立する条件
リアルの世界では、ビットの世界と異なり、店舗の家賃や商品の原材料費、人件費といったコストはなかなか下がらない。リアルフリー戦略はすべての業界で通用する訳でなく、一定の条件が揃っていることが必要になる。
①人間の本能に訴えるビジネス
現代の日本には、便利な商品やサービスがあふれている。便利さや効率の良さが極限まで追求されている現代だからこそ、「心地良さ」「感動」といった心を震わせる体験の価値が高まっている。
脱毛サービスは「来店時間軸」が長いため、本能に訴えかけるチャンスが多い。例えば両ワキ脱毛を完了するには約2年間、サロンに通い続ける。何度も来店する内に、他のサービスへの興味がわき、契約に至るケースが増える。リアルフリー戦略ではサービス、商品に広がりを持たせるのが大事である。
②古いしきたりが幅をきかせる時代遅れの業界
リアルフリーを目指すなら、コストの大幅削減が不可欠である。「古い業界かどうか」で判断するのは、コストを下げる余地が残されている可能性があるからである。
エステ業界には、脱毛機械の導入で、人件費を大幅に減らせる余地があった。
③顧客と直接接点を持てる業界
小売の最大の強みは、最終的な顧客である消費者と直接触れあっていることにある。消費者が何を望み、その程度の価格なら商品を買ってくれるかが肌感覚でキャッチできる。
戦略の実施
飛び込むべき市場を見極めたら、4つのステージに応じて戦略を実施する。
①草創期
一つの地域を選び、最初の店を開設。できるだけ短期間で複数の店舗を展開し、その地域での優位性を確立する「ドミナント戦略」を行う。コスト削減による低価格を実現し、口コミ効果を得る。
②成長期
複数の地域に進出し、ドミナント戦略を進める。口コミの量が加速度的に増加。
③安定期
ファンが増え、顧客の質が高まる。顕在化した問題点を解決しつつ、さらに高度なサービスの提供を目指す。
④再変革期
顧客同士がゆるやかなコミュニティを作り、そこで新たなビジネスを展開。第三者企業を巻き込み、皆がwin-winになれる関係を構築する。