「信条」こそが最も重要である
事業の競争力や市場の判断、リーダーシップは、経営にとって重要な要素であるが、決定的なものではない。会社の成功と失敗を分かつ本当の違いをたどると、社員の素晴らしい活力と才能をどれほどうまく組織が引き出すか、という問題に行きつくことが多い。
社員の活力と才能を引き出すのは、組織形態や経営管理能力ではなく、「信条」と呼ぶものの力と、信条が組織の人々に訴える力である。企業や組織の成功にとっては、以下の事が重要である。
①組織には、すべての方針と活動の土台となる健全な信条がなくてはならない。
②会社の成功にとって最も重要な要素は、その信条を忠実に固守することである。
③変遷する世界に対応するため、企業は信条以外、自らのすべてを変える覚悟が必要である。
IBMが成功できたのは信条の力のおかげである。IBMの哲学は大きく3つの信条にまとめられる。
①個人を尊重する
②世界一の顧客サービスを提供する
③すべての仕事を最高のやり方で遂行する
個人を尊重する
シンプルであるが、IBMの経営において最も長い時間をかけているものである。
・社員のクビを切らない
社員の能力を伸ばすことに力を入れ、職務要件が変わった時には再教育を行い、今の仕事で苦労しているとわかった時には、もう一度チャンスを提供する。
・仕事をしやすい環境を用意する
バンドのコンサート、ピクニック等の実施。気前の良い福利厚生を与えられなくとも、愛社精神を生み出すために、あらゆる手段を試す。
・社員のことを一番に考える
企業経営者として利益指向を持っているが、社員は第一番目でありつづける。経営陣は、個人それぞれの問題や志、能力、フラストレーション、目標があることを認識する。
世界一の顧客サービスを提供する
サービスは良い評判の鍵となる。評判はとても重要である。
・顧客サービスに専心する
IBMの学んだ見込み客のためになる最善の方法は、求められるものに合わせた機器類を提供することであって、自分たちの装置に合うように仕事のしかたを変えてもらうように頼むことではない、という事である。
・機械ではなくサービスを売る
サービスの評判は会社にとって一番の資産である。社員と顧客の関係、互いの信頼、評判を大切にすること、顧客を常に優先する思想。これらすべてを心底確信して、実行に移した時、会社の命運を左右し得る。
すべての仕事を最高のやり方で遂行する
IBMは社員に、どんな仕事であれ最高の成果を出すことを期待し、要求もする。
・楽観的に考える
成功を信じることが成功の助けになりうる。
・常に優位性を競う
「全部勝つのは無理。全体としては良くやっている」というのが失敗の第一歩である。