人間の行動の95%は無意識に操られている
過去50年、マーケティングの世界では定説になっている2つの大前提がある。
「消費者は、自分で考え、判断して行動している」
「消費者は、自分がなぜその行動をとったのかがわかっている」
しかし、近年、脳科学と認知心理学の研究者たちは「人間の行動の95%は無意識に操られている」という驚愕の事実を発見した。
私たちが目覚めている間は、「意識しないままに何かをする」状態になっている事がいくらでもある。クライアントとの打合せで何らかの決断をするのは顕在意識でも、車が運転できるのは無意識のおかげである。
脳が知覚したものを認知し実行する意識のことを「判断脳」、脳が無意識に処理する意識のことを「習慣脳」と呼ぶ。判断脳は、記憶の出し入れを意識的に行ったり、自分の意見を生み出したり、論理的に物事を解決したりする。一方の習慣脳は、心臓の拍動や体温の調節、それに学習した行動の記憶まで、広範囲の事柄に関わっている。
世に出る新商品の約80%は、失敗するか期待を大幅に下回る結果に終わる。この原因は誤ったマーケティングによるところが大きい。商品がヒットするかどうかは、消費者の習慣脳にある記憶と関連づけられるかどうかにかかっている。
新商品の失敗と並んで、企業が慢性的に抱える一つの問題は、顧客の喪失である。大半の企業は年に20%、業績のいい企業でも5年で50%の顧客を失うと言われる。企業は、顧客を維持するために、顧客満足度を高めるサービスに莫大な費用をかける。しかし、大規模なメタ分析によると、顧客満足がリピート購入に結びつく率はたった8%だという。商品をリピート購入する確率は、過去にその商品を買った回数が多いほど上がる。成功するには、消費者から無意識に習慣として選ばれるものになる必要がある。
習慣脳を味方につけるポイント
①顧客の言動ではなく行動に注視すること。習慣は行動の繰り返しから生まれる。
②習慣脳は、同じ結果が生じる行動を繰り返すことで育まれる。
③顧客が判断脳で考えていると、他の商品に乗り換えられやすい。
④競合他社から顧客を奪うには、その顧客の習慣を壊さねばならない。
習慣脳に受け入れられる商品の作り方
①消費者がそれを使う時にどんな動きをするかにフォーカスする
②設計段階から使いやすさを徹底追求する。利用手順が多いと習慣化が遠のく
③利用者に応じた機能と価格のバランスをとる
④ストーリーやトレードマークを利用する
消費者を調教する
習慣脳に自発的な行動を促すには、その行動を再びとりたいと思わせる必要がある。人には見返りが得られる行為を率先して行う傾向がある。消費者に与えることで行動を強化する。その際、行動が終わった時に与えることが大切である。