第三世界アメリカ
アメリカ人がこの国について抱いている「地球上で最も偉大な国」というイメージの対極にある言葉が「第三世界アメリカ」である。アメリカは第三世界への転落という道を歩み始めている。
アメリカが危険な道を歩み始めたことを示すのは、中流層の哀れな状況である。
・5人に1人が失業中か不完全雇用の状態
・9世帯に1世帯がクレジットカードの最低支払額を払えない
・住宅ローンの1/8が延滞か差し押さえ、毎月12万以上の世帯が破産
アメリカでは2009年、製造業の雇用が120万人分失われた。製造業はこれまでアメリカ人を中流に導き、その階層にとどめてきた仕事であるが、このブルーカラーの職の消失は数十年続いている。1950年には非農業部門の雇用の内30%を製造業が占めていたが、2009年には10%にまで低下。2000年以降、アメリカ製造業の雇用は1/3消えている。
その背景にあるのが、アメリカ経済の「金融化」である。金融危機の直前にはアメリカの企業収益の40%以上が金融業に入っていた。
また、アメリカが第三世界の国への道を歩んでいる予兆の一つには、国防費の増加がある。北朝鮮、旧ソ連などに見られるように国力の衰退が表れるサインの一つである。
責任は政治にある
このようなアメリカにした責任は政治にある。アメリカの政治が崩壊しているのは、「1人1票」という民主主義の基本原理が、私利私欲にまみれた政治的な駆け引きにとって代わったためである。
1万3700人を超えるロビイストが総額35億ドルという金額を使い、利益団体に有利な政策を導こうとした。ロビイスト達は、ウォール街やエネルギー政策、医療保険の改革計画を骨抜きにした。
アメリカが進んでいる壊滅的な道を変えるにはロビイストたちを叩きのめさなければならないが、残念ながら中流層のためのロビイストはいない。
アメリカを第三世界にしないために
第三世界への衰退を阻止するには、政府と民間の両部門からの大胆な発想が必要であり、1人1人が責任を持って事態に対処する必要がある。
そのためには以下のことがある。
・政治資金を公的なものに限定する
・ソーシャルメディアを利用し政府と新しい関係を構築する(ガバメント2.0)
・核の3本柱(爆撃機、潜水艦、ミサイル)の内1つをなくす
・金融商品の規制、銀行と証券の分離、大手銀行の解体によるウォール街立て直し
・市民ジャーナリズムの活性化
・メガバンクからの預金を引き揚げ、地銀や信用金庫へ移し替える