フィリピンでホームレスなど困窮状態にある日本人を取材したルポ。
開高健ノンフィクション賞を受賞した作品。
■困窮邦人とは
海外で経済的に困窮状態に陥っている在留邦人を「困窮邦人」と呼ぶ。所持金を滞在先で使い果たし、路上生活やホームレス状態を強いられている。
日本外務省の統計によれば、2010年に在外公館に駆け込んで援護を求めた困窮邦人の総数は768人。中でもフィリピンが322人と最も多い。困窮邦人に陥る要因は、様々で強盗被害に遭う、ギャンブルで大負けする、投資話に騙されるなどがある。
しかし、フィリピンでは、フィリピンクラブで出会った女性を追い掛けて渡航する日本人男性が圧倒的に多い。大半は50歳以上。日本での就労契約が切れた女性を追いかけ、小金を貯めてフィリピンへ渡る。そこで所持金を使い果たし、最終的に女性に捨てられ、周囲のフィリピン人の民家を転々とし、食事を分けてもらいながら生きる。年間平均気温27度のフィリピンでは、食べ物にありつくことができれば生き延びられる。
一旦所持金ゼロになれば帰国は容易ではない。不法滞在になると罰金が課せられる上、航空チケット代金も必要となる。大使館も、自分の意思で渡航し、所持金を使い果たし、帰国できなくなった者に税金を貸し付けることはできないため、親類に国際電話をかけ送金してもらうよう説得する側面支援にとどまっている。
困窮は自己責任ではない。
たとえ貧しい環境に育っても、フィリピン人は家族に囲まれて笑っている。逆にお金があっても、心の底から笑えない、不幸や寂しさを感じている日本人は、たくさんいるのではないか。
困窮邦人は日本を捨てた。彼らは捨てられたのではなく、実は日本が捨てられたのではないだろうか。
著者 水谷 竹秀
1975年生まれ。「日刊マニラ新聞社」の記者 ウェディング写真専門のカメラマンを経て2004年からフィリピン、「日刊マニラ新聞社」の記者。主に殺人事件や逃亡犯逮捕などの邦人事件、邦人社会に関する問題などの社会部ネタを担当している。 2011年、『日本を捨てた男たち―フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。
日本経済新聞 |
日本経済新聞 2回目 福井県立大学特任教授 中沢 孝夫 |
日経ビジネス |
帯 映画監督 崔 洋一 |
帯2 ジャーナリスト 佐野 眞一 |
帯3 作家 重松 清 |
帯4 法政大学社会学部 教授 田中 優子 |
帯5 ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員 茂木 健一郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 フィリピン人に助けられて | p.9 | 46分 | |
第2章 利用された人生 | p.81 | 31分 | |
第3章 逃げ続ける若者 | p.129 | 36分 | |
第4章 海外で失った自由 | p.185 | 32分 | |
第5章 掛け違えたボタン | p.235 | 31分 | |
エピローグ | p.285 | 3分 |