ミンツバーグ教授からのアドバイス
著者は音声認識ソフト開発ベンチャーに入社したが、ドットコム・バブルが弾けると業績は下がり続け、ある日、会社は買収された。チームは34名から15名となり、部下達の士気は最低であった。
ある日、上司が開発業務を人件費が安いウクライナに移管するという提案を持ってきた。こちらのエンジニアにはマネジメントをやらせるというが、根っからのエンジニア達にウクライナ人をマネジメントできるのか。部下達からは不満が噴出し、誰もが最初からさじを投げていた。
プロジェクトを成功させるため、著者は義父であるヘンリー・ミンツバーグ教授に会う。教授は世界的に有名な経営学者であり、代表作が『マネジャーの仕事』であった。
教授のアドバイスは驚くほどシンプルで「お互いの経験を振り返って語り合い、内省する時間を持つといいだろう」というものだった。
「自分の経験してきたことを内省する」「特定のトピックについて内省する」といったことは、すぐに実行できそうであった。
コーチング・アワセルブズ
ある日、チームのメンバーに、マネジメントについて学ぶ勉強会をやろうと呼びかけた。最初は皆、否定的だったが、最終的に開発チームを率いるリーダー5人が応じてくれた。
「コーチング・アワセルブズ」とは名前の通り、皆でマネジメントを学ぼうという会である。毎回、何か1つ、新しいことを取り上げて話し合っていく。最初は1週間に自分の身に起こったマネジメント体験を話そうとしても、愚痴や経営陣に対する批判ばかりになった。
そんな時には自分の内にある「怒っているという感情」を認め、その上で否定的に考えすぎていないか、改善すべき点はないか、見方を変えるとどうなるか、といった事に目を向けるように心掛けた。
試行錯誤の末、コーチング・アワセルブズは次のような流れで行われるようになった。
①マネジメント・ハプニングス(10〜15分)
前週に、自分がマネジャーとして経験したことや、直面した問題について、1人当たり2分程度でメンバーに語る。その後、内容を全員でフリートークする。
②トピックに基づく内省と対話(60分)
トピックについて簡潔にまとめられたテキストを皆で読み合わせ、それに関して話し合う。話し合いでは、全員の反応を注意深く見ることに気をつける。テキストを鵜呑みにせず、自分たち自身が考え、自分たちの環境や立場、仕事に応用することが大切である。
③まとめ(5分)
最後に、その日の内容と、話し合いの結果見えてきた「やるべきこと」についてのまとめをする。
マネジメントを学んだことで、皆のものの見方は変わった。ウクライナ人と仕事をするやり方を学ぶのは、キャリアにとってチャンスかもしれないと、前向きな意見も出るようになった。