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2011/12/25更新

マルチスピード化する世界の中で――途上国の躍進とグローバル経済の大転換

402分

4P

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収斂の一世紀

1750年頃までの数百年は、世界経済はどこも成長していなかった。やがて産業革命によって、人々の所得は急激に伸び始めた。この劇的な変化は、現在の先進工業国に限定され、影響を受けたのは世界人口の15%である。それ以外の国は、それ以前の数百年の状況がそのまま続いた。

1950年当時の世界経済は、先進工業国に住む約7億5000万人が貧困から解放され、残る40億人ほどが取り残された。
第二次世界大戦後、途上国世界の国々が成長を始めた。当初の成長は緩やかであったが、やがて加速し始めた。これは成長の「収斂の一世紀」の始まりであり、終着点にあるのは、人口の75%以上が先進国に住む世界である。

途上国発展の要因

経済成長は、イノベーションによる生産性向上から生じる。先進国と比べて途上国が非常に速いスピードで成長できる理由は、先進国に存在する技術や知識、ノウハウを輸入していることにある。

年平均7%以上の成長を25年以上続けることに成功した途上国の成功要因に共通するのは「世界経済の開放性」である。財やサービス、資本の流れの自由化、そして知識や技術の移転の自由化が進んだことである。

つまり、欧州や米国からの技術や知識の移転により、急速な発展を遂げた。先進国と途上国間の貿易拡大は、数多くの機会を生み「キャッチアップ成長」という現象の起爆剤になる。このキャッチアップ成長こそ、今途上国で起きていることである。知識ギャップが大きいほど、知識移転の経済的影響度は大きい。

こうした加速度的成長は、知識ギャップの縮小により、永遠には続かない。やがて途上国は、国内でも新しい技術を生み、国際的に共有するようになる。こうして途上国は先進国となる。

新興国は高成長を持続できるか

世界経済危機の後、新興国は驚くほどの回復力を見せた。新興国の高成長と金融の安定は、先進国が直面している大規模な調整を促すのに役立っている。中産階級の台頭による需要拡大や新興国間の貿易増加をもたらす。新興国が持続的な成長を遂げるかどうかは重要な問題である。

新興国は大きくなり、はるかに豊かになった。現在の構図が続けば、途上国が世界のGDPの50%を突破するには、10年ほどしかかからない。全体としてみれば、新興国は先進国の危機によって不安定化した世界を乗り切る態勢は整っている。

但し、先進国側に新興国の規模拡大と存在感に適応する能力と意志が必要である。新興国の持続的な成長には世界経済の開放性が必要なのに対し、先進国では保護主義という対応を引き起こしている。

成長スピードが異なる世界で、複雑性を増す国際関係を管理していくには、より良い世界的なガバナンス・システムが必要である。そのためにもG20の役割は重要である。