大正時代の終わりに、日本に大学教授として滞在したドイツ人哲学者の、日本弓道修行の物語。西洋人が東洋人の思想を知るためには、禅の精神と関わりがある弓道を行えば良い。著者は日本滞在中に弓道修行を行い、禅への造詣を深めていく。若き日のジョブズが出会った、西洋人による「禅」の哲学書。
日本人は弓道を決して、一種のスポーツと考えているのではない。それを一つの礼式的な業と解している。従って、日本人は弓を射る「術」を、主に身体的な練習によって身につけることのできるスポーツ的な技量と解していない。
その根源が精神の錬磨の中に求められ、その目標が精神的な適中、すなわち射手が根本において自分自身を的として狙い、自分自身を射当てるところまで達する適中にあるような技量と解している。
弓射は、弓と矢をもって外面的にではなく、自己自身でもって内面的に何事かを成し遂げるという意味を持つ。
日本の文化は禅と密接につながっており、その特性は禅的基礎を負っている。弓道はいわば禅の予備門を表す。
ヨーロッパ人が、東洋人の精神生活の領土に侵入しようとしても見込みがない。しかし、禅と関係している日本的な芸道の一つを習得することで、始めるのは別である。
著者 オイゲン・ヘリゲル
1884年生まれ。ドイツの哲学者 1924年、東北帝国大学に招かれて哲学を教えるべく来日。1929年まで講師を務める。この間日本文化の真髄を理解することを欲し、妻に日本画と生け花を習わせて講義にやってきた先生の教えを横で聞き、1925年には妻と共に弓術の大射道教を創始した阿波研造を師として弓の修行に勤しみ始める。 日本人と西洋人のものの考え方の違いや禅の精神の理解に戸惑うものの、ドイツに帰国する頃には阿波より五段の免状を受けた。 帰国後の1936年、その体験を元に「騎士的な弓術」と題して講演をする。
帯 アップル 創業者 スティーブ・ジョブズ |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序言 | p.13 | 2分 | |
1 精神的な弓道、その師範との出会い | p.16 | 8分 | |
2 弟子入り | p.32 | 3分 | |
3 呼吸法 | p.38 | 6分 | |
4 放れ | p.49 | 6分 | |
5 自己自身からの離脱 | p.61 | 6分 | |
6 師と弟子 | p.72 | 6分 | |
7 有心と無心 | p.84 | 6分 | |
8 暗中の的 | p.96 | 7分 | |
9 段級審査 | p.110 | 3分 | |
10 諸芸の名人境 | p.115 | 9分 | |
むすび 日々是好日、空の空 | p.132 | 1分 |