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2011/12/23更新

計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話

173分

7P

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それでも会社は回っている

ミシマ社は、いたってふつうの会社だが、周りからは、ふつうの会社とは思われていない。実際「大丈夫か?」と言われることが多々ある。
年間に出る新刊は6冊ぐらいで、社員が6〜8人。どのようにして経営がなりたっているのかわからないと言われる。

会社の代表はエクセルが使えず、社員は領収書の書き方もわからない。事業計画など存在しないし、営業マンはドヨーンと暗い顔。それでも会社は回っている。

始まり

ある日、寝床でひらめく。「出版社をつくろう」
布団を飛び出し、早朝まで思いつくままアイデアをノートに書いた。
「読者とまっすぐにつながる」「原点回帰の出版社」

創業間もない時期、いきなり大きな壁に直面した。金欠である。ここに300万円がありました。設立時に100万円使いました。残金200万円で、本を1冊発刊しました。印刷代、印税、デザイン代など1冊にかかる費用は200万円でした。しかし、本を出してから売上金が入ってくるまで7ヶ月かかります。倒産します。

2006年の年末、通帳は「あと数ヶ月でなくなるよ。せいぜい2ヶ月かな。」とささやいてきた。大いに焦った。次の瞬間、お金がないにもかかわらず「人を雇おう」と決めた。

創業1年未満の頃は、いろんな人から「黒字になりそうか?」と訊かれたが、答えようがなかった。黒字もなにも、まずは一年間会社をどうもたせるのかすら、全く絵を描けないでいた。すべてが「初めて」のことばかり。けれど、もともと人生なんて初めての連続ではないか。社会人になると知らず知らずのうちに「経験」でカバーする癖がつき、未経験への挑戦に対し、臆病になる。結局、強さは幻想でしかなく、弱さだけが本物だ。

「年を越せるだろうか」時間はこちらの事情や気持ちと関係なく進んでいく。そして、知り合いの編集者の方々に頼んで、フリー編集者としての仕事をふってもらうことで、ギリギリもちそうな手応えをおぼえた。

なぜ会社として回っているか

それから現在まで30冊ほどを発刊している。書店を回り、理解ある書店員に支えられ、手売りで本を売ってきた。
ワールドカップで優勝するためのミッションは「一戦必勝」、これに尽きる。会社がなぜ回っているかも同じことで、結局のところ「一冊入魂」以外にやり方はない。この1冊が売れないと、次の1冊を出すことはできない。この1冊を、受けとめてくれる読者がいるからミシマ社は存在できている。

規模の大小にかかわらず、すべての出版社は、一冊の積み重ねでしかなりたたない。安定など幻想に過ぎない。今、目を向けるべきは幻想ではなく「原点」である。一人の人がその本を手にとって喜んでくれることであり、いいものをつくりたいと思うことである。