民法という日本の法体系の中心に位置する法律の中核部分が、制定以来100年余りを経て、初めて大きく改正されようとしている。経済活動をゲームに例えるなら、民法はそのゲームの基本的なルールを定めている法律である。
買い物は「売買」、部屋の貸し借りは「賃貸借」だというのは、民法が定めているからである。買い物のトラブル、部屋を借りた時のトラブル、お金を貸した時のトラブルについて、基本ルールはすべて民法の中にある。民法は重要な法律である。
今回の民法改正は、広い意味での経済活動に関わるルール「契約法」に関する部分が対象となっている。民法研究の第一人者が、今回改正の要点をわかりやすく紹介している。
民法では取引を、贈与、売買、賃貸借、消費貸借など13の類型を用意し、それぞれの類型ごとに権利義務のルールを置いている。現代の経済活動においては、100年以上前に定められた13種類の類型に収まりきらない新しい契約が出現している。
これら新しい契約は、13の類型や取引慣行、民法の一般条項から類推してルールを導いている。過去の類推事例を用いて、新しく民法の類型に追加すれば、法的判断の安定化と効率化につながることになる。
民法の改正が必要な理由のもう一つは、市場が国境を越えて拡大したことにより、契約法の国際統一、共通化が求められていることによる。国際的な法形成も「外交」であり、世界各国は、法形成にしのぎを削っている。
著者 内田 貴
1954年生まれ。法学者 法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与 民法(債権法)改正検討委員会事務局長 東京大学法学部教授を経て、2007年10月より法務省経済関係民刑基本法整備推進本部参与。債権法改正作業に携わり、「民法(債権法)改正検討委員会」の事務局長を勤める。
週刊 東洋経済 2011年 11/26号 [雑誌] 京都大学客員准教授 瀧本 哲史 |
週刊 東洋経済 2011年 11/5号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2011年 11/12号 [雑誌] |
日本経済新聞 早稲田大学教授 瀬川 信久 |
エコノミスト 2012年 9/11号 [雑誌] 八重洲ブックセンター 本店 真田 泉 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 一〇〇年ぶりの見直し | p.7 | 8分 | |
第2章 民法とは?契約法とは? | p.21 | 17分 | |
第3章 市場と民法 | p.49 | 18分 | |
第4章 日本民法の生い立ち | p.79 | 20分 | |
第5章 国民にわかりやすい民法 | p.113 | 22分 | |
第6章 民法の現代化 | p.149 | 40分 | |
第7章 市民のための民法をめざして | p.215 | 12分 | |
おわりに | p.235 | 2分 |