金融化とは
金融市場、金融業者、および金融企業の役割や、一般人の金融利益を目指す動機付けがだんだんと増大していく過程のこと。
金融化の現象
①先進工業国・脱工業国の総所得において、金融業に携わっている人たちの取り分が大きくなる。
②蓄積する主体(家計・企業)と、実体経済において資本を使いモノやサービスを生産する主体との間で、金融業者の仲介活動が、ますます複雑、怪奇、投機的になっていく。
③ステークホルダーに対する企業経営者の社会的責任が、ますます株主という対象のみに絞られるよう、コーポレートガバナンスの法的制度や経営者の意識・目標が徐々に変わっている。
④各国政府において、蓄積から投資へなどのスローガンの下、国民に対する証券文化の推奨にますます重点が置かれるようになっている。
金融化の憂うべき結果
①格差拡大
ジニ係数の上昇が顕著なのは、金融化が一番進んでいるアングロ・サクソン社会である。30年前まで、所得税の高額納税者に対する急激な累進性に、同じ国民の間にはなはだしい貧富の差があってはいけないという「社会通念」が表明された。ところが、「証券文化」を生んだ国家間競争論などの新自由主義の勃興のひとつの結果として、その累進性がどんどん緩和された。
②不確実性・不安の増大
1980年以降、雇用・賃金の変動係数が大きくなり、安定性を失ってきた。しかし目立つのは、この変動係数の拡大が、上場企業のみの減少であるということである。つまり、不安定さを増しているのは、市場からの圧力に起因する可能性が高い。
③知的能力資源の配分への影響
各世代の最も優秀な人材が金融業に吸収されすぎる。
④信用と人間関係の歪み
間接金融から直接金融へと移る金融の非間接化は、同時に非人間化、取引無名化の過程でもある。間接金融では、互いに相手の存在を認め、契約が守られた。一方で直接金融では、債権者がたまたま買った無名の誰かになり、信用関係がなくなる。そういう、人と人との絆の破壊が、社会における信頼の侵食を加速するのだ。
現状維持に終わる金融改革
金融改革の目的は4つある。
①金融システムが実体経済を攪乱することがないようにすること
②破綻する金融機関の救済コストが一般納税者の重い負担とならないこと
③国民所得における金融業および金融業雇用者の分け前を提言させること
④分け前調整によって、他の部門でより社会に貢献しうる人材が金融業界に吸収される現状を変えること
しかしながら、国際通貨基金、国際復興開発銀行、国際決済銀行などの国際機関は腰が重く、世界経済の仕組みは2011年を過ぎてもリーマンショック前と大して変わっていない。