衰退する日本の漁業
日本の魚介類は1970年代半ば以降、下降し続けている。一方、国産魚が減った分、輸入量は増加している。日本の魚資源は乱獲により減少の一途をたどっており、我々の食卓は輸入魚に頼らざるを得ないのが現状である。日本の自給率は62%となっている。
日本の漁業は1970年あたりまで、右肩上がりに漁獲量を増やしてきた。しかし、排他的経済水域による漁場範囲規制、乱獲により衰退した。水資源の減少に伴い、魚群探知機を装備し、以前は獲らなかった小さな魚まで獲るようになり、水資源を守れなくなっている。
また、養殖業も下降傾向にある。養殖クロマグロを1kgつくるには、天然のサバの稚魚が15kgも必要となる。天然魚の減少を養殖魚で補うという考え方には無理がある。国内では餌を確保できないので、輸入に頼らざるをえないが、価格は高騰し、厳しい状況にある。
儲かる漁業の方程式
漁業は日本では衰退産業であるが、世界的には成長産業である。ノルウェー、アイスランド、ニュージーランド、チリなどは持続的に漁業収益を伸ばしている。
持続的に成長している漁業には、次の2つの共通点がある。
①漁獲を一時的なものでなく持続させるため「十分な親魚を獲り残す」こと
②利益を上げるために「獲った魚をできるだけ高く売る」こと
持続的に発展する漁業ができるかどうかは、漁業者の意識やモラルで決まるものではなく、政府の政策によって決まる。
個人経営が多く、日本と類似の産業構造を持つノルウェーは、かつて補助金依存体質で現在の日本と同じ状況にあった。乱獲により、漁獲量が激減し、産業は崩壊していた。
そこでノルウェー政府は、漁獲量規制を行い、資源を回復させた。「量で勝負の漁業」から「質で勝負の漁業」へと転換し、漁獲量全体を抑制しながら、魚の売上高を伸ばすことに成功した。
幼魚と成魚では1kgあたりの単価が大きく変わる。例えば、マグロの幼魚ヨコワを6年泳がせれば、売上が100倍になる。
ヨコワ(1歳)体重3kg×162万本=漁獲量4856t、単価550円/kg、売上27億円
マグロ(7歳)体重97kg×47万本=漁獲量45590t、単価5000円/kg、売上2280億円
日本の漁業は目先の売上を確保しようと、自らの首を絞めている。この不毛な早獲り競争を終わりにするには、各漁業者が漁獲できる量をあらかじめ決めて配分する必要がある。漁獲できる量が決まっていれば、漁師は、価値の高い魚だけを狙って獲るようになる。
新しい水産モデルを
漁業の復興には次の3つをすべきである。
①資源管理(漁獲量の枠を制限)
②経営統合による協業化・企業化
③加工流通業者を巻き込んだマーケティング実施