大切なのは「考える力」
目の前の業績重視の局面では、効率的に業務をさばいていくスキルや、上司に言われたことを忠実に速く処理する能力が評価される。経営環境の悪化した企業は、回復への道を模索している時、即効性のある方法論を求めがちになる。しかし、これまで通りのやり方だけで、根本的な問題を解決しなければ業績は上がらない。
そのため次世代を担う経営人材には、しっかりとした「考える力」が不可欠である。仕事をこなす力ではなく、その意味や目的を要所要所で問い直す姿勢と、事実に基づいて現状を把握し、制約を外して問題点を考え抜く、という姿勢がなくては、不確実な時代の経営の舵取りはできない。
深く考えることが習慣化された組織になっていくと、目の前の仕事を処理することはあくまでも「手段」にすぎないことが見えてくる。自分たちのやっている仕事が社会にどういう影響を与えているのか、会社が果たすべき社会的役割は何なのか、という自らに対する問いかけが新たな「気づき」を生み出す。
考えることを始めると、仕事の相手に対する言葉も、会話の内容も変化する。全体の状況が読めてくると、相手の事情も理解できるようになり、自分の都合だけを考えていた「自己最適」の考え方から、全体にとって「最適な状況」を考えるようになる。
このような状況が生まれ始めると、チーム内の結束力が高まる。会社の目的が自分たちの目的になり、議論を通じて共有された目標にコミットし、各人が動き始める。
考えるとは
考えるとは、頭の中でただ単に思いをめぐらすことではない。意味や目的を常に意識し、身体を使って、事実に即して考えることである。意味や目的を考えようと思えば、尺度となる価値観を自ら持っていることやそれを自覚的に反芻していることが必要となる。そのために日頃から物事の意味や目的、価値などを考える習慣を持つことが大切である。
「考えて知恵を出す」という行為は、自分に対して、以下の2つの質問を投げかける事から始まる。
「何について考えるべきなのか」
「どう考えるべきなのか」
現実の経営では、「どう考えるのか」に重点が置かれているが、本当は「何について考えるのか」が大切である。
今必要なこと
激変する時代に必要なのは、関心というアンテナを高く掲げ、情報を取り込むことで、状況をしっかり把握して全体感を持ち、何が一番必要とされているかを明確にしていく「考える力」と、周りを巻き込んで解決していく「対応力」である。そのためには以下が必要である。
・関心というアンテナを磨き、情報を集めること
・過去、将来という時間軸で全体感を持つこと
・状況を動かしている本質的な要因とは何かを探ること
・「何が問題なのか」をチーム内で議論し、共有すること