何も分からず父親の会社を継ぐことになった由紀とコンサルの物語です。
会計の本質
由紀 『会計は、会社のありのままの姿を表していないのですか?』
コンサル 『真実を表現した決算書はこの世に存在しない。そこには会社の主観が入っており、主観によって利益は変動する。』
由紀 『会計って、いい加減なものなのですか?』
コンサル 『会計は自然科学の様な絶対的な真理を追及するものではない。ルールの上に立った相対的な真実を追究するものなのだ。』
ルールの絶対的な正しさは問題ない。ルールを守り続けていれば、それが正しいのである。決算書は、会社の実体の正確な写像ではなく、要約された近似値にならざるを得ない。
月次決算のPDCAサイクル
由紀 『なぜ、月次決算を早く作成する必要があるのですか?』
コンサル 『学生時代、テストの結果を見直していましたか?』
由紀 『間違った箇所を丹念にフォローしました。』
コンサル 『同じことです。月次決算で目標と実績を比較することで、経営上の弱点が浮き彫りになる。その弱点は、早く是正する必要があります。』
会計はPDCAサイクルを効果的に行うために使われる。
計画Pは、年度の行動計画のことだ。次の実績Dは、現実の業務活動のことだ。活動結果は月次決算書にまとめられる。チェックCは、実績と予算や標準原価とを照らし合わせて差異を分析し、会社が抱える課題を明確にする作業だ。最後のアクションAは、明確になった課題に対する是正策の実施であるとともに、次のPDCAサイクルにつながる最初の一歩でもある。
利益構造を理解する
コンサル 『餃子と高級フレンチではどちらが儲かりますか?』
由紀 『細かな計算をしないと分かりません。』
コンサル 『会計を使うと簡単に分かるのだ。限界利益と固定費が分かれば、会社の利益構造が分かる。』
由紀 『限界利益率が高いので、フランス料理が儲かるのですか?』
コンサル 『フランスレストランは店の維持費などの固定費が高いため、売上が上がらなければ赤字幅は大きくなる。』
維持費が多くかかり、限界利益率の高いフランスレストランは、売上高が損益分岐点を越えると利益は大幅に増える。ところが、いったん損益分岐点を下回ると、赤字も一気に増えてしまう。
一方、限界利益率が低く固定費の少ない餃子屋の場合、売上が少なくては商売にならない。流行らなければ瞬く間につぶれてしまう。しかし、売上高が増えれば、維持費が少ない分すぐ利益に結びつく。逆に、多少売上が減っても、利益の減少は少ない。
両者は、全くビジネスモデルが異なるのだ。