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2012/02/09更新

アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか

303分

4P

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グーグル

グーグルは、先行するウェブのリンクという特性に目をつけ、人々がウェブ上で互いにリンクを貼り合う集合行動を、自らの検索精度を向上させるために役立てた。次にグーグルに後続したブログは、SEO対策に最適化されたHTMLを生み出すことで、自然にグーグルを通じて検索されやすくなる効果を発揮した。

2ちゃんねる

2ちゃんねる上の情報流通の特性は、情報が残らずに常に消え、流動していく「フロー」と、一般には許容されないような転載「コピペ」の2点である。
ブログの世界ではグーグルを通じ、「リンク」によって、優れた情報が伝播されるが、2ちゃんねるでは「コピペ」を通じて同様のメカニズムを実現している。2ちゃんねるでは、アーキテクチャ自体が「生態系」を運営するというよりも、膨大な数のユーザーの手動による協力で成り立っている。

一見するとユーザーにとって不便と思われる「フロー」という特性は、「コミュニティは盛り上がっても、数年もすれば衰退する。コミュニティの結束が高まるほど、新たに参加者への障壁になる」という思想に基づく。常連を排除し、階層を作らない「匿名性」により、独自の「生態系」をして存続している。

ミクシィ

ミクシィのアーキテクチャは、招待されざる者のアクセスを遮断し、招待された者だけを内側に引き入れる。そして、内側の住民たちの行動履歴を逐一追跡し、住民間の「覗き見」の自由を奪うものである。こうした安全なコミュニティのあり方は、ウェブ公共圏を理想とする論者からは否定的なものに映った。しかし、日本では公共圏から脱却するために受容されるに至った。

ミクシィのコミュニケーションのあり方は「繋がりの社会性」の性質を体現している。特に意味のない、ただ互いに「繋がっていること」だけを確認するために行われる、自己目的型のコミュニケーション。
結局、日本のウェブ上では2ちゃんねる、ミクシィという「繋がりの社会性」によって特徴づけられるソーシャルウェアが台頭してしまった。

日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるべきか?

米国的なインターネット社会のあり方を唯一普遍のものとみなす必要はない。2ちゃんねる、ミクシィ、ニコニコ動画、これらは日本社会の特質とアーキテクチャの「すり合せ」が生じていくことで、様々に発生し成長し存続してきた。その進化の過程は、多様な生態系のあり方の一つとみなすことができる。少なくともグーグルだけを唯一の生態系とみなす必要はない。

私たちは、社会全体に浸透するに至ったアーキテクチャの設計と進化を通じて、日本社会のあり方そのものを書き換えていくことも不可能ではない。