「グーグル」「2ちゃんねる」「ミクシィ」「ニコニコ動画」など、2000年代に登場したネットコミュニティやウェブサービスが、どのように進化してきたかを分析している。それぞれのサービスのアーキテクチャ(構造)を解き明かし、日本独自の進化についてを考える。
ネット上のウェブサービスもまた、情報技術(IT)によって設計・構築された、人々の行動を制御する「アーキテクチャ(建築・構造)」とみなすことができる。ブログやSNSなどのウェブサービスは、その情報ネットワーク上に構築された「場」が、ある種の「社会」と呼べる程度にまで巨大化した「ソーシャルウェア」と言える。
アーキテクチャの特徴は、規制される側がその規制の存在自体に気づかず、密かにコントロールされてしまう、というものである。規制される側に価値観やルールを内面化させる必要がなく、人を無意識の内に操作できる。我々はこの特徴を肯定的に捉えて、積極的に活用できる可能性を持っている。そのためにも、多様なアーキテクチャのあり方を知っておく事が必要である。
グーグルは、先行するウェブのリンクという特性に目をつけ、人々がウェブ上で互いにリンクを貼り合う集合行動を、自らの検索精度を向上させるために役立てた。次にグーグルに後続したブログは、SEO対策に最適化されたHTMLを生み出すことで、自然にグーグルを通じて検索されやすくなる効果を発揮した。
後続世代のソーシャルウェアは、先行世代のアーキテクチャの特性を生かし、それに最適化する仕組みを採用することで、自らの価値を高めてきた。こうした進化・成長メカニズムは「生態系」の比喩を使って説明される。ウェブ上では、リンクを通じて情報が発見され、共有され、多くのリンクを獲得した情報が人の目に触れられていく「自然淘汰」のメカニズムが働いている。
WEB2.0系サービスは、トラックバック、RSS、マッシュアップ機能などにより、サービス間で相互に影響し合い、そのネットワークを通じて「生態環境」を生み出している。
著者 濱野 智史
1980年生まれ。社会学者・批評家 専門は情報社会論。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て、現在、株式会社日本技芸にてリサーチャーを勤める。情報環境系の研究者として高い注目を集めている。
BRUTUS (ブルータス) 2012年 1/15号 [雑誌] |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2011年 10/4号 [雑誌] |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2011年 10/18号 [雑誌] 評論家 宇野 常寛 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 3分 | |
第一章 アーキテクチャの生態系とは? | p.11 | 14分 | |
第二章 グーグルはいかにウェブ上に生態系を築いたか? | p.31 | 32分 | |
第三章 どのようにグーグルなきウェブは進化するか? | p.77 | 32分 | |
第四章 なぜ日本と米国のSNSは違うのか? | p.123 | 26分 | |
第五章 ウェブの「外側」はいかに設計されてきたか? | p.161 | 23分 | |
第六章 アーキテクチャはいかに時間を操作するか? | p.195 | 32分 | |
第七章 コンテンツの生態系と「操作ログ的リアリズム」 | p.241 | 44分 | |
第八章 日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるか? | p.305 | 23分 | |
あとがき | p.338 | 3分 |
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