「無料ビジネス」とは
最初に、何かの商品に対する支払いをゼロ円(無料)に設定しておき、全体としては利益の拡大を目指すビジネス手法」を無料ビジネスと定義する。
無料ビジネス = 最初はゼロ円 + 利益を追求
例えば、「コーヒー1杯無料、2杯目以降有料」が無料ビジネスにあたる。「コーヒーおかわり無料」は、本書では無料ビジネスとは定義しない。
今はおカネがない人に対しても無料で商品・サービスを提供し、ビジネス全体で収益を上げる方法が主流となっている。
無料ビジネスの本質
無料ビジネスの本質は次の3つの要素で考えられる。
①値引
ある価格があるものを無料にしている事は、すなわち値引している事になる。
②販売促進
無料ビジネスは、最終的に他の何かで販売を増やして利益を得る事を目的としている。無料ビジネスの機能は販売促進である。無料だけでは、利益を追求できない。
利益の拡大は、全体的な価格戦略によって目指すもので、そのピースの一つとして無料ビジネスがある。
③個人向けファイナンス機能
初期負担ゼロ円でケータイを売る無料ビジネスには「ローン型の個人向けファイナンス」の機能がある。ケータイで遊ぶ無料ゲームには「株式型の個人向けファイナンス」(企業側が多数の消費者に対し、株式投資に近い感覚で出資する形)の機能がある。
つまり、おカネに余裕がない消費者に商品を売り込むのに適した機能が組み込まれている。
無料ビジネスは、値引の機能によって販売促進をして、消費を増やす効果と、個人向けファイナンス機能を組み込む事で販売促進をして、消費を増やす効果の両方を、同時に狙える点が優れている。
また、「戦略的値引」がやり易くなる事が長所である。何かを無料で提供する時、引き換えに顧客情報や双方向でやり取りできる情報ルートを得る。顧客情報の活用によって、顧客のタイプに応じた、きめ細かな価格設定を行うことができる。
消費不況と無料
不況の原因は消費の不足にある。不況から脱出するには、稼げない人も、消費水準を上げることである。これを実現するのに、株式型の個人向けファイナンスの側面を持つ無料ビジネスが適している。
不況の中、何かを無料にした上でビジネス全体では利益を得るというのは難しい。大抵の無料ビジネスは、個別の消費者ごとの採算を無視し、全体の採算で黒字を目指すことになる。企業は戦略的な値引きに、株式型の個人向けファイナンスの機能をセットして、販売促進を行うことになるがリスクは高い。しかし、成功時には利益を大きく伸ばし易い。
多くの店や企業が、全体的な価格戦略を考えた上で、無料ビジネスを試すことは、消費不況から脱出するための、一つの原動力になる。