日本の政府債務残高は1200兆円あたりが上限
2010年末時点の政府及び地方自治体の債務残高は約1125兆円にのぼる。2011年にはGDP比で204%となった。
発行額のほとんどを国内市場で消化している日本国債の場合、その資金調達の受け皿となるのは日本国内の金融資産である。その需給は以下の通りである。
・金融資産の供給
家計が保有する金融資産:1500兆円
企業が保有する金融資産:600兆円
海外からの資金供給:100兆円
合計:約2200兆円
・金融資産の需要
政府への貸出し(国債・地方債):1100兆円
企業への貸出し:250兆円
家計への貸出し:250兆円
株式投資:400兆円
合計:約2000兆円
資金供給から需要を差し引くと約200兆円。海外資産の保有を考えると、国内の資金供給余力という点から、国債発行残高は既にいっぱいである。これ以上発行額が増えれば、政府の資金需要によって民間の資金需要が押しのけられてしまう状態「クラウディング・アウト」が発生する。限られた金融資産を、国債と民間の資金需要で奪い合う形になると、金利が上昇し、民間経済への悪影響が深刻な問題となる。
外債を発行せよ
復興費用を賄うために大幅な増税を実施すれば、日本経済の回復は大きく遅れてしまう。また、復興財源を国債に頼ることは、非常に危険な綱渡りといえる。
復興資金は、外国から借りるべきである。震災復興を目的とし、日本の外貨準備を担保として、外債を発行し、外国に購入してもらう。但し、この外債は円建てとする。
海外に売るためには、日本国債の信頼性をアピールしなければならない。財政規律が守られるための客観的な条件の存在と、政府自身の財政に対する真剣さが問われる。
各国は今は数百年に1度という規模の天災に襲われた日本に対し同情的である。巨大災害ともなれば、素直に海外に助けを求める気持ちが必要である。外債を買ってくれなければ、外貨準備を取り崩すと言えば、アメリカは応じざるを得ない。
「円の国際化」が日本経済を救う
外債発行の真の狙いは、それを通じて円の国際通貨としてのポジションを上げていくことにある。円が国際化されることにより、グローバル経済を行き交っている莫大なマネーが、日本にも還流してくることになる。
アメリカはこの恩恵を享受している。基軸通貨国であるアメリカは世界中から安く資金を調達することができ、それを世界中で再投資することで、利回り格差によって投資利得を稼いでいる。
日本は莫大な金融資産を手元に抱えているのだから、いかにその利点を活用するかを考えるのが賢い戦略と言える。対外投資のリターンを高め、グローバルマネーの循環の中に自国経済を置き、競争力を失いつつある製造業の穴を補うことが大切である。