インフレへと向かう世界の潮流
中国、インド、ブラジルなどの新興国を中心としたインフレ圧力は、これまでの先進国のデフレ圧力を凌駕しようとしている。世界は着実にインフレへと向かっている。
実際、中国、インド、ブラジルなどでは相次いで利上げが行われており、インフレへの警戒姿勢が強まっている。
一方、2011年4月には、欧州中央銀行が政策金利を1.0%から1.25%に引き上げ、米国FRBでも、2011年6月に量的金融緩和を打ち切った。リーマン・ショック後に続いてきた先進国の金融緩和も修正される方向にあり、デフレの終焉を迎えている。
過去100年ほどの金融危機の歴史を検証すると、以下のパターンが見られる。
①金融危機発生 → ②財政赤字の拡大 → ③インフレ圧力昂進
金融危機後、政府による積極的な財政出動や金融機関への公的資金の注入により、世界の主要国は財政危機に陥る。政府は債務を棒引きにするため、インフレ政策を採用する。現在は、財政危機の状況からインフレ圧力が高まりつつある状態にあると言える。
今後の世界経済はどうなるか
著者は2012年にかけて、米国や中国を中心に世界経済は拡大傾向が続くと予測している。その理由は、世界各国で政治的ビジネスサイクルが上向くと見ているからである。
政治家は選挙が実施されるなどの指導者交代の可能性がある年には「大盤振る舞い」の景気対策を打つ傾向がある。2012年には、米国、中国、ロシア、フランス、韓国などで国政選挙等が行われる。
特に中国では、共産党大会の前年ぐらいから、地方の政治家が評価を上げるために、熾烈な争いを起こし、拡張的な経済政策がとられる。
日本はどうなるか
著者は2013年以降に、日本がデフレを脱却すると見ている。「復興需要」が本格化する2012年前半には賃金の安定的上昇が見込める状況になり、1年程遅れて、物価が上昇すると予想している。
但し、原油や商品価格、為替相場次第では、単純なインフレではなく、スタグフレーション(不況下の物価上昇)に陥るリスクがある。