日本的経営の特徴
企業が付加価値を生むのは、従業員の働きによるものである。だから企業は従業員のものである。こう考える傾向が強いのが、日本の企業である。日本の経営者は大抵、従業員の中から選ばれる。
この考え方は労使一体のコンセンサス経営であり、長期的な経営視点を保ち続けられる。反面、経営のスピードを欠くことがあり、思い切ったリストラなどの経営改革が打ち出しにくいという面がある。これが日本的経営の限界である。
日本企業はなぜ強かったか
戦後、日本は米国式マネジメントを創造的に吸収していった。その要因には、日本独自の「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」というシステムがうまく機能したことが挙げられる。
終身雇用が急速に普及した理由には、以下2点がある。
・戦後の混乱を前に従業員の信頼と忠誠の確立が急務であった。
・右肩上がりの経済成長が、終身雇用の普及と維持を可能にした。
終身雇用の普及によって、年功序列も拡大し、企業内組合も普及した。結果として、労使の協力体制を築き、人材育成面で長期的な計画を可能にした。
しかし、バブル崩壊後、経営のスピードを上げられない、思い切ったリストラができないと日本的経営が揺らぎ始めた。
日本的経営の問題点
①根回しや稟議に手間取って、スピードに乏しい。
②独創性に乏しい。集団主義的であり、出る杭は打たれる。
③国際性に乏しい。
しかし、問題点ばかり批判していても意味がない。日本的経営は、長い歴史と文化融合によって生み出されたものであり、一朝一夕に変えられるやわなものではない。日本的経営は文化そのものであり、その特徴はいいものを吸収し、融合してしまうことである。
日本的経営がさらなる進化を遂げるには、以下の歴史的な課題を克服しなければならない。
①世界経済のグローバル化
②技術の急速なハイテク化
③少子高齢化
日本企業が世界の技術戦争で勝ち残るためには、世界中から優秀な頭脳を集めなければならない。同時に彼らが独創性を発揮できるように、様々な仕組みや組織を工夫しなければならない。
21世紀の企業像
高度情報時代にあっては、消費者のニーズは多様化し、多品種少量生産が要求される。最も重要視されるのは、たゆまぬ価値創造である。
そのためには、各人が自主的に判断して行動するネットワーク型の組織が望まれる。大企業は、一騎当千のプロを抱えたプロダクション型の小集団の集積体にならなければならない。全員リーダー型の経営を志向すれば、一層優秀な企業に成長し続ける。