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2011/11/16更新

世界一のトイレ ウォシュレット開発物語 (朝日新書)

  • 林 良祐
  • 発刊:2011年9月
  • 総ページ数:192P

144分

4P

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ウォシュレットの原点

TOTOのウォシュレットが誕生して30年経つが、2011年1月で累計出荷は3000万台を超えた。2011年3月末で日本における温水洗浄便座の家庭普及率は70.9%にのぼる。

ウォシュレットの原点は、痔の患者などのために米国のベンチャーで開発された医療用の洗浄器である。当時、TOTOはこれを輸入販売していたが、水の温度が不安定な上、水が発射される方向も定まらないという欠点があった。
TOTOはこの製品から、「毎日お風呂に入って身体を洗う」「新しいものへの抵抗感も少ない」という日本人には、「おしりを洗う文化」は受け入れられると判断し、開発が始まった。

開発にあたっては、以下のような苦労があった。

・肛門の位置がどこにあるかというデータ集めに社員を説得しデータを収集した。
・おしりにお湯を当て続け、最適な温度を調べた。
・温度を一定に保つため、IC制御を使うことになったが、漏電しないようにするため、特殊な樹脂でコーティングする技術を見つけた。
・TVのゴールデンタイムにトイレの宣伝を流し、最初は講義の電話が殺到した。

TOTOのものづくり哲学

これまでなかったものを世に送り出し、文化として根付かせる。

TOTOは、ウォシュレットだけでなく、世界初の本格的ユニットバス、「朝シャン」用のシャンプードレッサーなどを世に送り出してきた。そのことによって、日本人のライフスタイルは、変化し続けてきた。

TOTOが目指すものに「文化を作り出す」ということがある。単に「困った」を解消するだけなら、それは「手段」でしかなく、文化の創造までに至らない。
単なる「手段」ではなく、その商品に本来どんな目的とビジョンがあり、それを表現するためにはどのような技術が必要なのかを突き詰めて考えていくことが大切である。

TOTOで成功した開発手法

・必要な機能を考え、どのような部品が必要かを検討してから、デザインに入るという、従来のやり方を変えた。まず自由にデザインを考え、そこに必要な機能を入れ込むという逆転の発想を行った。

・部門の垣根を取払い、一人ひとりが自由にアイデアを出し合い、それを絞り込んで方向性を統一し、ひとつの目標に向かって、皆が思いを一つにする場を持った。デザインは、デザイナーの力だけによって、生まれるものではなく、開発者全員の創意によって生まれる。

・現場のモチベーションをいかに上げ、維持するかに力を注いだ。そのため現場に大きな権限を与えた。メンバーが弱音を吐いた時は、家庭教師のようにつきっきりで励まし考え続けた。

・ミーティングでは、メンバーに対し、自分に関係のない技術の話であっても、耳を傾けるように指示した。互いに顔を突き合わせ、情報共有することを大切にした。