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成功は細部に宿る

ジョブズの製品は進化するほどシンプルになる。製品は極力脇役に回り、ユーザーを主役に立てる。
ユーザーの負担を軽くするために開発作業はむしろ増え、設計もきめ細かくなる。

ジョブズはよく開発チームに聞く。「もし僕が製品だとして、購入した人が僕を箱から出して起動するまで僕には何が起こる?」
使い勝手やインターフェースだけでなく、梱包、販売方法に至るまで、彼はあらゆる部分に目を光らせていた。
その情熱は、彼が「究極の一般消費者」であることによる。

海賊になろう!海軍に入るな

Mac開発チームの合宿時、メンバー全員に「海賊になろう!海軍に入るな」とプリントされたTシャツが渡された。
プロジェクトによっては並ならぬ熱意と集中力が必要で、そのためには有能な人材を少数集め、制約を取り払って自由に働かせることが必要とジョブズは本能的に知っていた。正当な勇気が原動力なら、海賊は海軍には絶対できないことを成し遂げられる。

ジョブズは、海賊の親玉として、自分が求めているレベルの高い作業が実際に進んでいるかを見極めていた。彼が極めて不機嫌になるのは誰かが正直にものを言おうとしない時だけだった。製品について誰より深い知識を持つだけに何一つ見逃さず、的外れな発言には鋭い指摘を入れる一方、理にかなった正当な指摘にはどんな低い層のスタッフからの提案や批判だろうと耳を傾けた。

口説き落とす術

ジョブズは最高の人材、最高のパートナーを見つけ出し、自らの事業・製品の協力者に巻き込むという点で達人だ。

彼は誰かを雇う場合、口説き落とすような態度になる。
「想像(イマジン)」を連発しながら、これから自分達が作ろうとしている製品の機能や使い心地を述べていき、その製品の世界に連れて行き、夢を共有させる。

全体的な視野からの製品開発

ジョブズはよくこんな例えでAppleの製品がなぜ見た目も機能も優れているべきなのかを説明した。「展示会で披露される試作車は『素晴らしいデザインだ』と思う。4、5年後にその車がショールームに並ぶとひどい姿に変わり果てている。」
「設計者がアイデアをエンジニアに見せると『無理。こんなのは不可能だ』と突っぱねる。エンジニアが可能と思えるものに変え、製造担当者に持っていくと『こんなの製造不可能だ』と変更を要求される。『成功』をこねくり回して『失敗』に仕上げるんだ。」

例えばiPodやiPhone、iTune Storeでは、それを利用する人々がどんな思いをし、どう活用し、どう楽しむか、構想の段階でくまなく想像した。
ジョブズは「ホールプロダクト」という考えで製品開発に臨み、想像できるものは必ず実現できると考え、「できない」を許さず、ユーザーが最高と思える製品に仕上がるまで徹底的に追及する。