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利益なき成長

大企業各社が発表する中期経営計画の中身は、売上も利益も右肩上がりで伸びていくことになっている。しかし、1960〜2005年まで、日本の産業界に長らく君臨してきた多くのメーカーは売上を増加させる一方、実質利益を1970年前後から停滞させている。つまり「利益なき成長」を続けている。
日本経済はバブル崩壊から悪くなったという認識が広く浸透しているが、問題は少なくとも第一次オイルショックの時期に端を発している。

日本企業は強迫観念に取り憑かれたように成長を求め、売上高を伸ばし続けたが、その陰で利益を度外視したツケがたまって、閉塞感を打破できない状況に追い込まれてしまった。

売上に利益が伴わなくなってきたのは、1970年代前半である。これは第二次世界大戦によって、瓦礫の山となった日本再建のための経済成長が終わりを迎えたことを意味する。
焦土の再建が一段落した後、日本は輸出に経済成長の機会を求めた。売上目標を定め、価格ではなく量を重視した。結果として利益なき成長をもたらした。

どうすべきか?

日本企業がどうすべきかという問いに対する模範解答には以下のものがあるが、いずれも一筋縄でいくものではない。

①イノベーション
製品でイノベーションを起こしても、立地や構え(デリバリーのプロセス)などの異次元の競争で負けることがある。

②品質
品質概念は「製品が顧客の期待を上回る程度」と「製品が顧客の期待を裏切らない程度」という尺度に分類される。前者において、日本企業は必ずしも得意とする訳ではない。

③多角化
日本企業は、高度経済成長時代、生産性を高めるために抱えた余剰人員を活用するため、多角化を図った。その方法は既存事業の周辺領域への進出であったが、これは必ずしも競争優位につながる訳ではなく、新規事業には困難が伴う。

④国際化
かつて日本は外国企業に門戸を開く一方で、自国の企業防衛に努めた。結果、外国企業で成果を上げた企業は限られることになった。同じことが新興国における日本企業でも起こりうる。

どこに活路を見出すのか?

世界経済をマクロの視点で見た場合、第二次大戦後から、富、技術、思想の拡散が行なわれた。市場のパイは増えたが、取り分の増減が問題となった。後続の国々がシェア争いに参加し、競争が厳しくなった。日本企業はどうすれば良いか。

・多くの企業に共通しているのは、量産品は見込みが薄い。
・規模の経済がモノを言うビジネスは避けるべき。
・特定の顧客グループの価値観にフォーカスする。
・成長ありきという前提をやめる。
・歴史に残る発明を取り上げて、発想を変え、一からやり直す。(リ・インベンション)