現在の大不況と1929年大恐慌の共通点
・富が一部の富裕層に蓄積。一般大衆の購買力が奪われている。
米国の平均賃金は2008年のリーマンショックまで30年間、インフレを考慮するとほぼ横ばいである。2000年代には低下している。経済発展を考えると、所得が平等に分配されていれば、米国民の生活水準は6割以上向上していたはずである。
最上位1%の所得層の所得が1928年と2007年にピークに達し、対国民総所得比で見るとどちらも23%を超えていた。最上位10%に広げても、同様になり、いずれも全体のほぼ半分の所得を得ている。
大繁栄時代
第二次世界大戦後の1947〜1975年は、米国の大繁栄時代である。国民1人1人の所得が上がった。この要因は、中間層に繁栄の分け前を与えられるように政府が制度を整えたからである。
1950年代の所得税の最高税率は91%、引き下げられた1964年でも77%であった。つまり、政府は高所得者からの税収を中間層に配分する累進的な税制をとっていた。
所得格差の拡大
大繁栄時代の後、中間層の所得は伸び悩んだ。その原因が「グローバル化」と「オートメーション化」である。これら2つの原因によって、人々は雇用を失い、あるいは低賃金の職につくしかなかった。
また、この時代には規制緩和と民主化が進んだ。所得税の最高税率は25〜29%に軽減され、さらに所得の一部はキャピタルゲインとして扱われることが可能となり、税率15%のキャピタルゲイン税が選択されることにつながった。
金融の自由化により、2007年金融・保険会社の利益は、全企業利益の4割を占めるようになった。金融業界は短期的な利益を求め、米国経済を食い物にした。
富裕層は政治家に莫大な献金を行い、ロビー活動にとり、自分たちに有利な政策を誘導していった。
リーマンショック
大規模な金融救済策は、実態経済と雇用を守る手段であると説明された。しかし、中小企業は融資を受けられず、人々は自宅を失った。
金利は大幅に引き下げられ、大手銀行は実質ゼロ金利で借入を行えるようになり、収益は大きく改善した。
何をすべきか?
①負の所得税の導入
富を再分配するために、中間層に所得補助をする。
②炭素税の導入及び最高税率の引き上げ
①の財源として、炭素税の導入と富裕層上位5%への増税を行う。
このような対策は難しいかもしれないが、新しい深刻な不況という「余震」があれば、改革が進むかもしれない。
解決策が何も取られない場合には、大企業や金融機関と怒れる大衆との間に断層が生じるだろう。