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2012/02/17更新

街場のメディア論 (光文社新書)

  • 内田 樹
  • 発刊:2010年8月
  • 総ページ数:211P

127分

3P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

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マスメディアの凋落

マスメディアの凋落の最大の原因は、インターネットよりもむしろマスメディア自身の、マスメディアに関わっている人たちの、端的に言えばジャーナリストの力が落ちたことにある。ジャーナリストの知的な劣化がインターネットの出現によって顕在化してしまった。それが、新聞とテレビを中心として組織化されたマスメディアの構造そのものを瓦解させつつある。

語法の定型性の呪い

メディアが知的な生産力を失ったのは、その定型的な言葉遣いの帰結である。僕たちが今読まされている、聞かされている文章のほとんどは、血の通った個人ではなく、定型が語っている、定型が書いている。固有名と血の通った身体を持った個人の「どうしても言いたいこと」ではなく、「誰でも言いそうなこと」だけを選択的に語っているうちに、そのようなものならぞんざい志無くなっても誰も困らないという平明な事実に人々が気づいてしまった。

メディアの定型性をかたちづくるもの

① メディアは世論を語るものだという信憑
世論とは、「揺るがぬ事実であるのだが、自分の生身を差し出してまで主張しなければならないほど切実な事実ではない」、と定義できる。世論というのは、みんなの意見である以上、「私」が語ろうと黙ろうと、それについて何の責任も引き受ける必要の無い言説である。
世論は「誰かが言うことなのだから、私が言っても平気なこと」という感覚で発言をする時、人の口調は攻撃的で粗雑になる。つまり、自分が言いたいことを気分に任せて言いたいように言えばいい、後は、専門知識の豊かな人や、緻密な推論能力のある人が責任を取ってくれるという言動にでる。
一方で、誰かが言ってくれるので、黙っても良いという考えにも陥る。

② メディアはビジネスだという信憑
社会が変化しないと、メディアに対するニーズが無くなる。したがって、社会制度の変化は良いことであるというのはメディアにとって譲ることの出来ない根本命題である。だから、メディアは戦争が大好なのだ。
社会制度の劇的変化が起こると、情報へのニーズはメディアに確かな商業的利益をもたらす。そういう図式がすべてのメディア人へ、無意識のうちに深く刻印されている。それが無意識のものである以上、メディアが変化を求めることは誰に求められない。変化の無い所にさえ変化を作り出そうとする。変化しなくても良い者を変化させようとする。変化への異常なまでの固執。それは、近代のメディアに取り付いた業病のようなものだ。
メディアは、金儲けのために作られたものではない。「贈与と返礼」という人類学的機能を託されてこの世に登場したものである。

世論とビジネスがメディアを滅ぼした。