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2012/01/24更新

蟻族―高学歴ワーキングプアたちの群れ

  • 廉 思
  • 発刊:2010年9月
  • 総ページ数:261P

235分

4P

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群居村

2007年夏、『中国新聞週刊』の「下を向いた青春」という記事を読んだ。そこにはある大卒者が北京で仕事や生活をしていく有り様が描かれており、憂うべき現状や若く繊細な心に驚愕させられた。こうした人々が本当にいるのか、新聞に取り上げられた「群居村」に行き、調査することにした。

集団は非常に人数が多く、その多くが都市と農村の境界地帯か近郊の農村に居住し、いくつかの自然村落である「群居村」を形成している。「群居村」での生活上のストレスは少なく、様々な友人を作ることも容易である。そのため、大卒者が続々と住み着き、数年して事業展開の方向と十分な生活資金を得た後、次々と転出していく。
そこには名門大学を卒業した者もいるが、地方や民間の高等教育機関を出た者が大半を占めている。完全失業状態の者もいるが、保険のセールスや飲食サービス、広告の営業、電材販売などの低所得の仕事に従事する者が大半である。
それらの人々の生活条件は劣り、社会保障が不充分で、民主的な権利は失われ、社会の公正さに対して疑念を持つことが多く、思想や感情の振幅が大きくなり、挫折感や焦燥感といった精神的な問題が深刻である。外との交流はインターネットに依存し、それが感情のはけ口になっている。

「大学を出ている」「所得が低い」「一カ所に集まって暮らしている」この典型的な特徴を持つ集団を「蟻族」と名付けた。

蟻族とは

蟻族の大部分は1980年代に生まれた。活力や理想にあふれ、野心や意気込みを持っている。大学教育が知識と教養を与え、美しい未来を約束していた。しかし、就職後の状況や「群居村」での生活に、青春の夢を託す場所はなく、焦りや方向の定まらない暗澹とした日々に耐え忍ぶことを身につけた。しかし、同時に楽観的で明るくもあり、自分の選択を信じ、ゆっくりとした下積みの中で未来の飛躍を期待している。

蟻族は改革開放後に生まれた世代として、中国経済の急成長と社会の大きな変化を目撃してきた。そして、彼らは危うさも持つ。
中国の伝統的なシステムに科挙試験がある。全てのインテリに出身やコネによらず、自己の運命を変えるチャンスを与えていたが、今の時代は権力とコネの社会であり、苦学した一般家庭出身の子供ほどチャンスが少ない。こうした状況が「蟻族」に体現されている。
大学に入り人生を変えるのだということを小さい頃から教え込まれ育ち、大学合格後も勉学に励む。しかし、卒業する頃にコネがないために、また「村」に戻ることしかない事に気づくのである。

蟻族問題は社会の調和と安定、平和にかかわる問題であり、その解決は慎重に行わねばならない。