歴史上、それぞれの業界で文句なしの第一位であった企業が偉大さを失い、凡庸な企業に転落するのであれば、成功している時にこそ、よほど警戒しなければならない。どれほど優れた業績を達成していても、どれほどの力を獲得していても、すべての組織は没落しうる。強力な勢力がかならず頂点に止まるとする自然の法則はない。
1980年のバンク・オブ・アメリカがそうであったように、企業は表面的には全く健全だと思えても、実際には衰退がはじまっていて、急速な衰退に向かう瀬戸際の危うい状態になっている可能性がある。衰退は静かに忍び寄ってくる。そしてある時、何の前触れもないと思えるほど唐突に、大きな危機に陥っている事実に気付かされる。
詐欺や極端な不運、スキャンダルなどの要因により、衰退する場合を除き、強大な企業がいかに衰退するかを示す段階的な枠組みは五段階で構成され、それぞれの段階を順番に経過する。その五段階とは以下の通りである。
第一段階「成功から生まれる傲慢」
第二段階「規律なき拡大路線」
第三段階「リスクと問題の否認」
第四段階「一発逆転策の追求」
第五段階「屈服と凡庸な企業への転落か消滅」
これらの段階を急速に進む企業もあれば、何年も時には何十年もかけて進む企業もある。例えば、ゼニスは五つの段階を経過するまで三十年かかったが、ラバーメイドは第二段階の終わりから第五段階まで、わずか五年で転落している。また、一つの段階に長く止まるが、別の段階は短期間で経過する企業もある。
脱出への道はあるのか。衰退の道筋がわかっていれば、下り坂にある企業は早めにブレーキをかけ、進路を反転できるかもしれない。第四段階の深みにまで落ち込んでいた企業が回復した例はあるし、以前より強力になった例すらある。ディズニーやIBMも歴史のある時点で業績が落ち込んだが、その後に回復している。
企業の衰退は大抵、自らが招いたものであり、復活も大抵は自らの力で達成できる。自分たちが衰退への道を歩んでいると分かったとき、何をすべきなのか。この問いへの答えはかなりの部分、規律ある経営慣行を厳守することだという事が分かっている。