1980年代のアメリカでは日本からの輸入品の奔流によって、アメリカの製造業が追い詰められていた。
「アメリカの製造業が衰退してはならない」、「アメリカのものづくりの強さを信じ、製造業が復活することを期待しよう」という反応が大勢を占めた。
しかし、アメリカは、先端金融やIT関連サービス、ビジネスコンサルティングなど付加価値の高い新ーサービス産業が成長し、衰退する製造業が放出する以上の雇用を生んだ。そして、アメリカの所得を引き上げた。
90年代以降の日本の問題は、中国の工業化によって引き起こされた。今の日本の状況は、80年代のアメリカに類似している。
製造業の海外移転は、震災前から怒涛の勢いであった。国内設備投資は伸びず、アジア向け投資は65%増。震災による電力コスト上昇で、この傾向は加速する。
日本は、高付加価値のサービス産業を育成し、サービスの貿易立国へと転換する必要がある。
著者 野口 悠紀雄
1940年生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、一橋大学名誉教授 大蔵省時代から論壇に盛んに寄稿し、『情報の経済理論』では日経経済図書文化賞を受賞。一橋大学助教授時代に「『財政危機の構造』を中心として」でサントリー学芸賞受賞。1990年代以降に続いた長期不況に関して、その原因を戦時中に構築されたシステム(「1940年体制」)の非効率さにあるとして、経済論壇において一大センセーショナルを巻き起こした。
エコノミスト 2011年 8/9号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2011年 7/23号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
供給制約下での復興で何が問題となるか | p.1 | 33分 | |
対外資産で復興資金を賄える | p.49 | 25分 | |
震災後の日本を支えるのは、製造業ではない | p.85 | 39分 | |
ビジネスモデルの大転換はいかにして可能か? | p.141 | 29分 | |
中国工業化におされた日本製造業の生き残り策 | p.183 | 17分 | |
外需依存経済のメカニズム | p.208 | 20分 | |
工業製品価格と賃金が下落し、分配が不平等化 | p.237 | 20分 | |
金融危機を惹起した輸出依存成長 | p.266 | 58分 |