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2011/09/07更新

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)

  • 石井 彰
  • 発刊:2011年7月
  • 総ページ数:224P

168分

12P

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現在のエネルギー論争

将来のエネルギー選択に関して、原子力発電の擁護派と再生可能エネルギーの推進派の間で、白か黒かというイデオロギー的な議論が繰り広げられているが、どちらも現実味を欠いている。
それぞれ一長一短のある各エネルギー源をいかに上手に組み合わせて、経済性・安定性の維持と環境負荷軽減、放射能汚染リスクを最小化するかを考える必要がある。


天然ガスの積極利用を

今後のエネルギー選択を考える上で鍵となるのは、天然ガスの積極利用とエネルギー源と地域の分散化、多様化である。

日本における天然ガス利用のシェアは15%であるが、ドイツ、米国では25%、英国やイタリアでは40%、ロシアでは50%以上となっている。

天然ガスは石炭よりもCO2排出量が低く、資源量が豊富である。近年は技術革新により、シェールガスと呼ばれる従来利用できなかったガス資源を利用できるようになった。その埋蔵量は400年分以上あるとされている。

また、天然ガスを活用することは、省エネにもつながる。

火力発電の平均発電効率は4割弱で、化石燃料が本来持っているエネルギーの約6割は電気にならず全く無駄に廃熱として環境に捨てられている。日本全体のエネルギー需要サイドの電力化率が25%程度に過ぎないのに、エネルギー投入サイドの電力化率は45%もあるのは、火力発電の発電効率の低さにある。

火力発電の発電効率を高めるには、従来型の石炭火力発電所を、最新型の天然ガス・コンバインドサイクル発電に切り替えることである。これによって、発電効率は5割向上し、CO2排出量は2/3も減る。他の省エネ代替手段に比べ、コストも安い。仮に既存の石炭火力発電所をすべて切り替えると、原子力発電所がすべてなくなっても、排出量は変わらない。

日本において、天然ガスの利用が進まなかったのは、天然ガスの輸入価格が米国の約3倍、欧州の2〜3割高と調達コストが高かったからである。その原因は、日本の電力会社の工夫と努力が不足していたためである。
これまで天然ガスの価格は長期契約により、石油価格を基準に決められてきた。調達コストは、結果的に電気料金という形で消費者に回されてきたと言える。今後は、天然ガスの仕入交渉にも努力を重ねる必要がある。

天然ガスの積極利用は、エネルギー安全保障の観点からも有効である。地理的のみならず、顔ぶれ的、方法的にも調達を多様化することは、エネルギーの安定供給を確保する上でも重要なことである。