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2011/09/05更新

東電帝国―その失敗の本質 (文春新書)

175分

5P

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福島と原発

東電50年史には、「東電の供給区域内で広大な用地を入手することは困難と判断され、需要地に比較的接近する候補地点として福島県と茨城県の沿岸地域を対象に調査・検討が進められることになった。」とある。この時点で内陸ではなく海岸に原発を建設する選択がされていた。
当時、福島県双葉郡では地域振興を目的に工業誘致を模索しており、福島県も同様であった。こうした中、トップ交渉により、原発誘致用地買収が決定した。
その結果、県下で最も開発の遅れた地域は、一転してトップレベルの一人当たり所得を誇るまでとなった。1975年の大熊町の税収は90.7%を原発関連が占めた。その他、東京電力は約130億円をかけてナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」を建設して寄付するなど、多額の寄付も行われることとなった。

マスコミを支配していく東電

1979年9月、朝日新聞社は原子力問題担当の記者を全国から集め、原発賛成へ転換するための研修会を開いた。朝日新聞の原発賛成への動きは、この5年前の1974年から始まった。石油危機で広告が減る中、編集担当専務の決断で原発推進の意見広告を受け入れる方針が決まった。
そして、朝日新聞に原子力のPR広告が載り始めると、1955年から原子力推進派であった読売新聞も広告を解禁。毎日新聞は、原子力発電の反対キャンペーン中であったが、「原発賛成」に転向して広告出向を勝ち取った。

神話の語り部をあやつる

攻めのPRへと突き進み費用がかさんだため、次第に原発のPR関係費は、一基作るのに3,000億円以上もかかる原発建設費の一部として認識されるようになった。東大を中心とした御用学者が提供した素材を電力会社と経済産業省が神話にしたて、マスコミや広告会社、関係団体などを語り部として地元住民を納得させてきたのが原子力安全神話の構図だった。

カネで政治家をコントロールする

電力業界が政治献金をした主たる目的は、電気料金の値上げをいつ申請しても認可されやすいようにしておく、いわば環境つくりであった。政治献金に対する世論の風当たりが強くなると、「電力業界の政治献金は止める。が、役員の個人献金は積極的に行う」という個人を偽装した組織的献金へと方針転換した。電力と政治を結びつけるくさりの輪は札束である。

驕りとプライド

原発の管理は本来、危機管理として対応しなければいけないのに、東電はいつの間にか損得にかかわるリスク・マネージメントに摩り替わっていた。巨額の研究費があるものの、想定外の研究費はゼロだった。原発事故はあってはいけない→事故はありえない→原発は絶対に安全だ、と巨額の資金をばら撒きながら原子力安全神話を振りまいているうちに、自分達が安全神話の罠にはまってしまった。