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2011/09/01更新

次世代インターネットの経済学 (岩波新書)

  • 依田 高典
  • 発刊:2011年5月
  • 総ページ数:240P

170分

3P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

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フリーはありえない

デジタルの世界では、コンテンツが無料になるというのは、都合の良い神話である。経済学的にあり得ない。

コンテンツ・ビジネスのコスト構造は、制作コストと流通コストに分けられる。デジタル化によって流通コストは大幅にダウンしたものの、制作コストは依然として発生する。流通の中抜きだけでは価格はゼロにならない。

デジタルの経済の法則には次の2点がある。

①規模の経済性
伝統的なミクロ経済学では、生産の当初は規模の経済性が働くが、次第に規模の経済性は落ちていき、やがて不経済に転じるとされている。これは労働時間が長くなると、作業の効率性(生産性)が落ちてしまうことが前提にされている。
しかし、デジタル経済の世界では、規模の経済性が成り立つ領域が非常に広い。つまり、莫大な固定費用(インフラ設備費、コンテンツ制作費)とゼロ同然の限界費用による供給側の規模の経済性が特徴となっている。

②ネットワーク効果
ユーザーの便益がネットワークの規模に依存する性質がある。例えばskypeのようなインターネット電話は、より大規模なネットワークに加入した方が、より多くのユーザー同士で通話できるので、ユーザーの利便性が高まる。


『フリー』では、デジタルコンテンツの限界費用ゼロを強調しているが、付加価値を生むには莫大な固定費用が必要であることが論じられていない。固定費用をユーザー数で割った平均固定費用をカバーするために、価格は限界費用にマージンを上乗せする必要がある。
サービスの提供にかかる限界費用が無視できるのは事実であるが、固定費用をどうやって回収するかは企業の死活問題である。フリーミアムで成功している企業が実際には、ほとんど存在しない理由である。

両面市場の経済学

Googleのビジネス・モデルは、一方で無料サービスでユーザーを自社サイトに集めておいて、他方で検索連動広告で企業に課金するというものである。
このビジネスモデルの成功の鍵はネットワーク効果である。多くのユーザーが集まるから企業は広告を出したがる。ユーザーは便利なGoogleを使い慣れることで、スイッチング・コストが生じ、Googleを使い続ける。

ネットワーク効果をレバレッジとして効かし、一方で無料、他方で有料という二種類のユーザーを共通のプラットフォームでつなぐビジネスモデルを両面市場という。両面市場では、プラットフォームを独占する企業がネットワーク効果が働く側のユーザーに対し、価格を下げる、または無料にし、多くのユーザーを囲い込んで、他方の側のユーザーをロックインさせ課金できる。