食糧自給率が低下した原因
自給率低下の原因は、飼料であるトウモロコシ、油用作物である大豆と菜種、パン等の原料である小麦の輸入量が増えたためである。つまり、これらを1961年のようにほぼ自給できるようになれば、カロリーベースの自給率を8割程度まで改善することが可能である。
食料危機は起こらない
食料は日本と同盟関係か友好関係にある先進国(アメリカ、オーストラリアなど)から輸入している。その供給元は政治的にも経済的にも石油等の供給元と比して遥かに安定している。
また、その輸入に要する費用も石油等に比べて遥かに安い。農産物輸入の中で、エビやマグロ、タバコやワインの金額が占める割合が多いことを知ってしまえば、経済と食料安保を結びつけることがばからしくなる。
農業と政治の関係
全国の選挙区を農村型と都市型に分けて考えると、衆議院では農村型が45%、参議院では62%になる。農家戸数は、日本の総世帯数の約6%に過ぎない。しかし、その6%が大きな政治力を持っている。その最大の原因は、農協に准組合員と呼ばれる人々(自分の前の世代まで農業をやっていた人)がいるからである。その戸数は、日本の総戸数のおよそ20%程を占めており、彼らの投票により国会議員の約半数が決まる。
農村部で選出された議員にとって、農民の減少は望ましくない。そのために、口では農業の競争力強化をいいながら、実際は規模拡大を妨げる行動をとる。それは、自分が議員として生き残るためである。
日本より食料自給率が低いオランダが、最も強い農業国
オランダは、国土が日本の10分の1、自給率は日本の2分の1でありながら、農作物の純輸出額が世界最大の農業大国となっている。世界で最も強い農業を有する最大の理由は、食料自給率が低いことにある。
自給率に直結する農作物ではなく、値の張る農作物であるタバコ、チーズ、ビール、牛肉、トマトなどを大量に輸出しているのである。価格が安い穀物は隣国から輸入し、それを用いて高価なチーズや肉類を作って儲ける加工貿易を行っているのだ。
オランダは、多くの土地を必要としない農業に特化することによって、成功を勝ち得ている。つまり、食料自給率を低下させることにより、農業を儲かる産業にしている。しかし、民主党も自民党もマニフェストの農業政策は一律に自給率向上をうたっているのである。
日本の農業の行くべき方向
まず、世界食料危機を前提としたカロリーベースの食料自給率を高めようとする戦略から脱却する必要がある。食料危機はおきることはない。
その上で、農業においても選択と集中を進める必要がある。広い土地を必要とせず、また日本の高い技術力をいかせる畜産、及び野菜に注力することが儲かる農業に必要な選択である。