人口減少を考える7つの視点
①これから人口減少は避けられない。人口予測の不確実性は小さい。
そのためにも予め対策を講じることが必要である。
②人口の中で働く人の割合が低下する「人口オーナス(重荷)」が生じている。
人口オーナスの時代になると、一人当たりの所得は低下し、人手不足が進行し、勤労世代が担う社会保障などの負担が重くなる。
③人口は長期的な経済成長に影響を及ぼす。
短期的な経済成長は、需要サイドによって影響を受けるが、長期的には供給再度によって規定される。人口オーナスは、労働力、資本、生産性のすべてに影響を及ぼす。
人口減少により、労働力は減少。高齢化の進行により、貯蓄から消費に移行することで国全体の貯蓄は減り、資本不足になる。生産性の内、年金、医療、介護などの部門の負担が増加する。
④人口オーナス現象には、正統的な経済政策で対応するべきである。
労働人口の割合が低下するのに対し、考えられる対応は以下の3つしかない。
・就業率を上げる。女性や高齢者に働いてもらう。
・1人あたりの人間力を高める。高い教育水準やノウハウを持った人材を増やす。
・より成長力の高い分野に人を振り向ける。
資本不足への対応は以下の2つである。
・財政の健全化。貯蓄を財政赤字のファイナンスに利用しない。
・海外からの投資を促進する。
生産性への対応は以下の2つである。
・効率的な市場の枠組みを整備し、技術開発を促進する。
・世代間の負担の不平等をなくす。
⑤人口オーナスへの挑戦は新たな発展の機会でもある。
人口オーナスに対抗するため、経済社会の仕組みを変えていくことで、社会構造をより良いものにしていくことができる。女性の子育てと就業の両立支援や世代の自立(不平等解消)、高齢者マーケットの拡大など。
⑥年金・医療・介護の解決策をいかに実行するかが重要である。
引退世代の年金を現役の勤労世代が負担する「賦課方式」を維持するには、勤労者の負担を高めるか、引退世代の支給を削るかしかない。現世代は国債によって、問題を先送りにできるし、人口オーナスの下では、高齢者に有利な提案が通りやすいのが問題である。
⑦人口オーナス問題は世界的な問題である。
韓国、シンガポール、中国などの地域は、近い将来、日本並みか上回るスピードで少子高齢化が進む。日本は人口オーナス問題の先進国であり、日本がこれを克服できれば、他国に対する手本になる。