「TPP不参加が鎖国」の嘘
日本の全品目の平均関税率は、韓国やアメリカよりも低い。農産物においても、韓国やEUよりも低い。日本の食料自給率は4割程度しかなく、穀物のほとんどを輸入に頼っているので、むしろ農業の関税は低すぎるぐらいである。
日本はWTOに加盟している。EPA、FTAについても12の国と地域で締結しており、鎖国しているなどと言えない。TPPの交渉参加国は、アメリカ以外は小国ばかりで、中国も韓国も参加していない。
アジアの成長を取り込むなどは不可能
現在、TPP交渉に参加している9カ国に日本を加えたGDPシェアは、アメリカ67.2%、日本24.1%、オーストラリア4.4%、その他4.3%。つまり、日米で約90%を占めており、アジアの成長を取り込むなどは誇大妄想と言える。
さらにTPP交渉参加国はGDPに占める輸出割合が高く、日本より外需依存度が低い国はアメリカしかない。つまり、日本が輸出できる市場は実質的にアメリカしかない。
中国は自国の輸出に有利な為替操作をしている国であり、韓国はアメリカとFTAに合意しているため、TPPに参加しそうにない。日米でほとんどのシェアを占めるTPPに参加する意味はない。
「国を開く」というメッセージは逆効果
日本の平均関税率は諸外国と比べても低い方であり、その意味で国はすでに開かれている。それにも関わらず「これから、国を開きます」と宣言すると、日本が閉鎖的な国というイメージを持たれてしまう。
関税率が低いのに「国を開く」と宣言すれば、日本が開放すべきものは関税以外の、非関税障壁だということになる。つまり、社会的規制、安全規制、取引慣行、文化など外国企業が日本市場に参入する際に面倒と思うものすべてが障壁だと見なされ、それを放棄するように迫られる恐れがある。
アメリカの狙い
リーマン・ショック後、アメリカは自国の過剰消費によって、輸入超過を続け、世界経済を引っ張ることはできないという認識に至った。そのため、輸出を促進し、輸入を抑制することで、経常収支の赤字を削減しようと考えている。
オバマ大統領は、今後5年間で輸出を倍増する戦略を提唱しており、TPPはこの戦略の中に位置づけられている。TPP参加国は、輸出依存度の高い小国ばかりのため、アメリカはTPPに日本を巻き込もうとしている。
なぜTPP参加ありきなのか
対米依存の安全保障を続けるためには、アメリカの主導するTPPへの参加が不可欠という先入観のため、政府はTPP参加ありきの結論を出している。「TPPに参加しないと、日本は世界の孤児になる」という非合理な強迫観念の根っこには、「国防はアメリカに頼り、平和と繁栄を謳歌したい」という強い願望がへばりついている。