書評家の役目
素晴らしいと思える作品を一人でも多くの読者にわかりやすい言葉で紹介すること。作品と読者の橋渡し的存在が書評家である。
トヨサキ流書評論
①粗筋も「評」の内である。
書き手の理解の度合いによって、粗筋紹介の質も大きく異なる。極端な話、粗筋と引用だけで成立し、自分の読解をまったく書かない原稿も、内容と方法、文章が見事であれば、立派な書評である。粗筋と引用の技にこそ書評家の力量が現れる。
②「オレ様」書評は品性が低い。
自分の知識や頭の良さをひけらかすために対象書籍を利用するのは下劣である。
③贈与としての書評は、読者の信頼を失う。
著者への贈与としての書評は読者の信頼を失うので自殺行為である。書評は読者に向かって書かれなければならない。
④書籍の情報も大事だが、読み物としての面白みも書評の重要な要素の一つである。
⑤面白い書評はあっても、正しい書評なんてない。
ネタばらしはどこまで許されるか
レビュアーはこれからその本を読む人の読書の興をそいではならない。勘所を明かさないで、その本の魅力を伝えるのがレビュアーの芸である。
書評と感想文の違い
プロの書評には「背景」がある。本を読むたびに蓄積してきた知識や語彙や物語のパターン認識、個々の本が持っている様々な要素を他の本の要素と関連づけ、いわば本の星座のようなものを作りあげる力。その有無が書評と感想文の差を決定づける。
トヨサキ流書評の書き方
①カバーをはずす。本体だけの方が読み易く、カバーを汚したくない。
②三色ボールペン、付箋を使って以下の部分をチェックする。
・ストーリーの展開上、重要と思われる箇所
・登場人物の性格や特徴を端的に示す情報
・年月日、年齢といった数字
・引用するのに適当と思われる文章
・自分の心にしみる表現
③書評を書く際に、付箋の箇所を読み返す。
④書評に必要と思われるページに白い紙をはさみ、書評の見取り図を頭に描く。
書評を書く時、一番気をつかうのは書き出しの部分。「読者は最初の2、3行でその記事を読むかどうか判断する」という仕込まれたことによる。
例えば、読者の頭に「?」を生じさせ、次章にいざなうといった、物語から少し離れた話題から入って、読者の気を惹くといった事を行う。