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2011/08/19更新

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 宮川 剛
  • 発刊:2011年2月
  • 総ページ数:256P

173分

1P

  • 古典的
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パーソナルゲノム時代の到来

ゲノムとは、生き物が持つ、それぞれの遺伝情報の総体のことであり、ヒトがヒトになる30億の暗号(塩基配列)によって規定される設計図のことです。遺伝子の秘密を担うゲノムに何がかかれているかが次々と明らかになり、さらには技術とコストの革新的進歩により、数万円という低コストで自分自身の全ゲノム情報に誰でもアクセスできる「パーソナルゲノム時代」が到来しつつあります。

自分、こころ、ゲノムの関係

脳科学者は、「こころや意識というものは脳の中にあり、脳が働くことによって生み出されている」と考えています。つまり、自分とは自分の心のことであり、そのこころは脳から生み出されているといえます。ゲノムに脳の作り方の全てが書いてあるということは、ゲノムこそが自分を自分たらしめているものの実体と考えることが出来るのです。

こころの病と遺伝子

今までは「こころの問題」として解決策を見出せなかった精神疾患について、ゲノムからのアプローチで解決しようという時代へと変わってきています。ヒトゲノムの解読は、全て終わりました。しかし、遺伝子の個々の働きや、各々の関係の解明は始まったばかりです。全ての遺伝子の80%は脳で発現(機能)しており、そのうちの多くの遺伝子は、こころや行動の特性に何らかの影響を与えているかもしれません。精神疾患・発達障害などのこころの病が発症する原因を解明するべく、大規模な研究が各地で進められています。

ゲノムから分かること

うつ病などの脳疾患へのかかりやすさはもちろん、どれくらい社交的か、どれくらい新しいもの好きかなどの個性や性格、知能、数学の成績、記憶力などの知的能力に影響を及ぼしていると考えられるゲノム上の個人差はどんどん明らかになってきています。しかしながら、遺伝子は複雑に相互に影響を及ぼすと共に、環境や経験の影響もあるために、現時点では特定の現象に影響を与える遺伝子は分かっているもののトータルとしての遺伝子の影響を理解することは難しいのが実状です。

ゲノム脳科学と近未来

好むと好まざるにかかわらず、個人が手軽に自分のゲノムを解析できる社会は既に到達している。しかしながら、社会が技術のスピードに追いついてきていないのではないか。それは、倫理的・法的・社会的問題について、あまりにも議論が進んでいないと感じるからです。ゲノム情報を公開すれば、自分だけでなく親や子供についての情報も公開したことになります。この、究極の個人情報であるゲノム情報の管理はどうするべきか議論がない。十分な議論と適切な規制を策定することでゲノムの研究開発が促進され、医療や予防医学への活用、さらにはエンターテイメントなどの各種ビジネスへの応用が広がり、国民生活のクオリティーの向上につながることが期待される。