なぜ日本の製品はダメか
日本のものづくりは、壁にぶつかっている。その理由は中国や韓国の追い上げではない。自分たちがこれを作りたいという理念、目標を失っていることによる。
高度経済成長期は、ものが普及していなくて、お客さんが競って欲しがる時代だったので、機能と品質を売り物にしていれば良かった。しかし、今は生活必需品は揃い、物質的に充足した生活が普通になっている。
今、人々が欲しがる商品は、必要で仕方なく買うものより、「必要ないかもしれないけれど欲しくて仕方ないもの」である。
iPhoneや韓国製品は「自分はこれを作るために生まれてきた」という信念に沿って作られている。自分に真剣であるからこそ、顧客にも真剣になり、使いやすい。日本の携帯電話には、「自分たちは何を作りたいか、作るべきか」というビジョンがない。信念を基に集中投資している韓国企業やアップルに日本は勝てない。
これからのデザインに必要なこと
「必要ないかもしれないけれど欲しくて仕方ないもの」を作るにはどうすれば良いか。一つは視点を「ものづくり」から「ことづくり」に変えることである。「こと」とは、ユーザーエクスペリエンス、つまり顧客への新しい価値提案である。
代表的なものが、かつてのソニーの『ウォークマン』である。iPodにその地位を奪われるまでは、若者の音楽文化を支える道具であった。ウォークマンは画期的な製品であったにも関わらず「新発明」や「新開発」の技術は用いられていない。
もの余りの時代、デザイナーは「もの」をデザインしているだけではダメである。人間は無駄なものに囲まれて暮らすのが一番の贅沢である。無駄とわかっていても、欲しくなるものが人を幸福にする。
奥山清行的仕事方法
・質より量をこなせ。最初から質を追っても、自己満足なものしかできない。
スケッチの量をこなすことで、クリエイティブな発想が生まれる。
生まれつきクリエイティブな人などいない。
・動き続けること。日本、イタリア、アメリカを転々とすることで、視野が広がる。
他の人に見えないものが見えてくる。
但し、動く事をやめないと実現しない世界もある。例えば陶芸家のような。
・「悩み」が重要。
悩みをどう解決するか、昇華させるかが、創作物の存在感や主張に直結する。
ものづくりの過程でのストーリーが大切である。
・自分よりも相手を幸せにすること。
相手に得をさせることが、結果的に次の仕事につながり、幸せをもたらす。