人類の偉業は、直観的なひらめきから生み出される。そのひらめきのメカニズムについて、様々な事例を紹介しながら、解説している。
イノベーションの仕組みがわかる1冊。
■戦略的直観とは
人類史上に見られるあらゆる発見・功績に共通する原動力を「戦略的直観」と呼ぶ。様々な歴史の進化には必ず既存の世界観を一新したり、全く新しい世界観をもたらす実践的なアイデアが存在する。その際、戦略的直観は人間の脳裏に作用し、新たなアイデアを生み出す鍵となる。
戦略的直観は、漠然とした予感や本能的な直観のような「単なる直観」とは一線を画す。単なる直観とは感情の一形態であり、思考ではなく感覚である。戦略的直観はその正反対の概念で、感覚ではなく思考である。明確で傑出した思考をもたらす突然のひらめきが人々の脳裏にある霧を晴らす。ひらめきを得た瞬間、思考自体は冷静沈着である。
■進歩とは既知の発見の組合せである
一般的には、過去と未来の間には断裂があり、進歩とはその断裂を超越するような飛躍的進化だと考えられている。しかし、進歩とは飛躍ではなくあくまで曲がり角であり、しっかりと地に足の着いた状態で起こる。
曲がり角という名の進歩は、既知の発見を取捨選択し、再編成することで、全く新しい概念を生み出す過程である。個々の発見そのものは新しいものではない。つまり、熟考するだけでは進歩は生まれない。
■ひらめきとは
ひらめきとは脳の一般的な機能であり、すなわち頭に何かが思い浮かぶことである。数少ない断片が統合されて一つの思考が容易に形成される場合には、ひらめき自体に気づきもしない。しかし、多くの断片が時間をかけて統合されていく場合には、ひらめいたと気づくものである。
この断片とは記憶である。古い記憶は、海馬によって脳の特定の場所に刻み込まれる形で存在する。新しい記憶とは単純に、たった今、頭に取り込んだものである。新旧を問わず記憶は複数の断片から成り、それはひらめきによって統合され、思考を形成する。
人類のイノベーションは、特定の人間のひらめきから創造される。人の世界では、誰かが機会を見出し、機会を手につかみ、それを実現することによって進化がもたらされる。どのような機会が存在し、誰がそれを見出すかということは予測不可能なため、我々には世界が進展する方向性を予測することはできない。
しかし、少なくとも、こうした進化がどのように起きたのかはわかっている。人類の偉業のきっかけは、空き地のように開けたものではなく、壁の隙間のような形でもたらされる。そしてそのきっかけは、隙間のみならず空き地全体を埋めることも可能な、過去の要素の組合せとして生まれる。こうした過去の要素なくして、きっかけは誕生しないのである。
著者 ウィリアム ダガン
コロンビア大学ビジネススクール上級講師 フォード財団での戦略コンサルタントを経て、コロンビア大学ビジネススクールで、「第7感」について大学院課程とエグゼクティブコースで教えている。 また、世界の企業の何千人ものエグゼクティブに「第7感」について講義を行っている。2014年、学長教育優秀賞を受賞。
週刊 ダイヤモンド 2011年 1/29号 [雑誌] フライシュマン・ヒラード・パートナー 徳岡 晃一郎 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
日本経済新聞 アサヒビール社長 泉谷 直木 |
帯 一橋大学名誉教授 野中 郁次郎 |
PRESIDENT (プレジデント) 2012年 4/30号 [雑誌] ダイキン工業会長 井上 礼之 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第1章 ひらめきと第一感 | p.2 | 10分 | |
第2章 地球史に残る科学革命 | p.16 | 15分 | |
第3章 右脳と左脳 | p.36 | 12分 | |
第4章 戦略的直観VS.専門的直観 | p.52 | 16分 | |
第5章 ナポレオンのヨーロッパ征服 | p.74 | 13分 | |
第6章 仏陀の闘い | p.92 | 15分 | |
第7章 ビル・ゲイツとグーグルが運命を懸けたもの | p.112 | 40分 | |
第8章 社会的企業の実践経営 | p.166 | 33分 | |
第9章 アフリカ彫刻と食事をするピカソ | p.210 | 18分 | |
第10章 戦略的直観は教えられるのか | p.234 | 13分 | |
第11章 ケネディのアポロ計画 | p.252 | 9分 |
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