ライト兄弟はなぜ空を飛べたのか?
そこには不安定を前提に、自らが制御するという思想と勇気があった。現代社会を生きる人々に航空工学の泰斗による不安定な時代を生き抜く逆転の発想が紹介されている。
著者は航空工学者にしてエッセイストとしても有名な、故佐貫亦男氏。前半の約3/4を使ってレオナルド・ダ・ビンチからライト兄弟に至る飛行機のパイオニアの物語と、その中で、なぜライト兄弟が最初の成功者となりえたか、なぜ兄弟がその後急速に没落したかについて解説されている。後半1/4は、工学上の安定、不安定の概念に関連する8編のショートエッセイ集になっている。
ライト兄弟が空を飛べた理由は以下の要因による。
①飛行機を安定して飛ばすという発想ではなく、不安定を前提とした。
操縦することで、安定を取り戻すという逆転の発想があった。
②自分たちが操縦することを前提にし、自らが操縦を覚え、実験を重ねた。
③最初から商品化として飛行機を開発する決心を持っていた。
これまでの先駆者が墜落を恐れ、自分で操縦することを前提としない安定した飛行機を作ろうとしたのに対し、ライト兄弟は自分たちで操縦することを前提としたところに成功の要因があった。今の不安定な時代、この逆転の発想が求められる。
著者 佐貫 亦男
1908年生まれ。航空宇宙評論家、エッセイスト 東京帝国大学工学部航空学科を卒業後、軍命で日本楽器製造(現ヤマハ)に赴きプロペラの設計を行う。陸軍の九七式戦闘機を担当した。 1941年、ユンカース社からフルフェザー機構・圧縮木材製プロペラ技術導入のため、大戦最中のドイツに出張。同年6月、独ソ開戦のためシベリア経由の帰路が絶たれ、1943年11月まで在独。 戦後は気象庁で風速計の開発に携わり、その後東京大学教授、日本大学教授を務めた。 『引力とのたたかい-とぶ』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著作は専門の航空工学やロケット工学から生物学、ヨーロッパアルプスの山歩きにまで及んでいる。 晩年は航空評論家として活躍した。
エコノミスト 2011年 11/15号 [雑誌] 女優 中江 有里 |
週刊 ダイヤモンド 2011年 1/15号 [雑誌] 丸善書店 特販グループ長 本橋 一夫 |
日本経済新聞 作家 瀬名 秀明 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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安定序説 | p.9 | 6分 | |
Ⅰ 1 まず飛行の志 | p.23 | 3分 | |
Ⅰ 2 飛行安定は精神の安定から | p.29 | 7分 | |
Ⅰ 3 飛行機安定の基本原理 | p.41 | 4分 | |
Ⅰ 4 不幸な天才 | p.48 | 4分 | |
Ⅰ 5 安定化における凡人の役割 | p.56 | 319分 | |
Ⅰ 6 緊急事態を考えない者に安定はない | p.63 | 5分 | |
Ⅰ 7 もう一人のやむをえなかった無計画者 | p.72 | 7分 | |
Ⅰ 8 真に身体を張った第一人者 | p.85 | 9分 | |
Ⅰ 9 当然の成功者 | p.101 | 6分 | |
Ⅰ 10 安定よりも操縦を | p.112 | 7分 | |
Ⅰ 11 ライト兄弟の冬眠 | p.125 | 5分 | |
Ⅰ 12 ウィルバーの失速 | p.134 | 8分 | |
Ⅰ 13 無風の中の安定 | p.149 | 4分 | |
Ⅰ 14 ヤナギに風と受け流す | p.157 | 5分 | |
Ⅱ 1 ヘリコプターは皿まわしである | p.169 | 3分 | |
Ⅱ 2 コマは小宇宙である | p.175 | 6分 | |
Ⅱ 3 過度の安定は悪である | p.185 | 4分 | |
Ⅱ 4 安定なシステムは立ち上がりが悪い | p.193 | 3分 | |
Ⅱ 5 正直者の力学的モデル | p.199 | 5分 | |
Ⅱ 6 ごますりの力学 | p.208 | 4分 | |
Ⅱ 7 加速度の心理的効果 | p.215 | 6分 | |
Ⅱ 8 多段ロケットの脱皮 | p.226 | 6分 | |
あとがき | p.236 | 1分 |