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2011/08/18更新

日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書)

202分

8P

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形骸化している国会審議

衆議院の本会議審議時間は年間60時間程度である。イギリス議会下院やフランス議会下院では年間1000時間以上もの本会議を行っているのに比べ、日本の国会本会議は儀式の場になっている。
但し、委員会の審議時間は合計で1300〜1400時間に及ぶ。つまり、日本での法案審議は国会に提出される前の段階で内容が決まる要素が強い。

また、審議の中身についても、ドイツやフランスなど他国では、議員の多くからの修正案が提出され、採択されるのに対し、日本では政府対野党の論戦に終始しがちで、法案修正に結び付く実質的な審議は稀である。

国会審議の形骸化を招いた要因は、自民党政権下で形成された与党事前審査の慣行である。日本の政策決定は、法案の実質的審査が国会提出前の与党の内部手続きに委ねられている。

諸外国では法案修正は、与党議員の発議によるものが多い。しかし、日本では、法案は官僚と与党議員との交渉が妥結した後で、与党議員を党議拘束し、国会での審議は封じられる。結果、法案に族議員など一部の意向が強く反映される等の問題があった。


国会と内閣の分離

ヨーロッパの議会政治では、内閣の人間が議員との兼職を禁止されている例も多い。お互いは独立した存在で、内閣が法案を国会に提出し、国会がそれを審議する。そのために、内閣は国会に法案を提出する権限を有している。
一方、日本では「内閣=与党」という構図になっており、国会審議の形骸化につながっている。そして、内閣の責任が曖昧になっている。

日本では、法案審議は与党に委ね、内閣が矢面に立っていない。内閣にある程度、国会審議への関与を認め、矢面に立たせるという改革が必要である。内閣には政策決定を主導することが求められている。それは選挙で勝利した政党による独善的な政権運営を意味するものではない。委員会で法案修正につながる活発な審議をし、その成果を国民と共有していくことが大切である。


参議院は必要か

アメリカやドイツなどの連邦国家では、上院は各州代表という位置づけにある。単一国家が、なぜ二院制を維持するのか、という合理的な説明は難しい。議会制の新興国の多くは一院制をとっている。
日本の参議院選挙は、政権選択の場になってしまった。参議院が内閣不信任を実質的に決議できる立場になると内閣は不安定になる。
参議院が独自性を発揮するには、衆議院とは異なる選挙制度を持ち、権限を弱め、言論の力で存在感を発揮できる仕組みにするのが良い。