数学的思考とは
数学そのものと異なり、「数学っぽく、ものを見て、数学っぽく、ものを考える」こと。つまり、物事を論理的に考えたり、図形を利用して考えたり、単純化してシュミレーションしてみたりすることである。
数学的思考は世界の不具合のからくりを見抜くことができる。
その一部の例を挙げる。
動学的不整合性
事前に最適である戦略が、実際に時間経過とともに実行段階で必ずしも最適でなくなること。
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・親が子供に「お小遣いを使い切ったら、どんな必要があってもあげない」と宣言して、子供に節約させようとする。
しかし、子供はお小遣いを使い切ってしまう。これは、子供が使い切ってしまった後でも、どうしても必要な出費があれば、結局は親が折れ出すと先読みされているからである。
動学的不整合の構造が表れている場合、臨機応変に対応できることを相手が読んで行動するので、相手の戦略に誘導される。
この場合は、ルールや選択肢をなくし「どんな事態になっても方針は変わらない」ことを事前に知らしめることが有効である。
リスクシェアリング
極端なリスク引受けが双方の合意のもとで成り立つことがある。
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・社長が時に高額報酬を得る。これは社員が給与を固定給でもらっていることに起因する。固定給であれば、経営者は会社の業績に関わらず、一定の給与を支払わなければならない。つまり、経営者が業績の変動リスクを引き受けている。
社員は一般的に蓄えが多くないため、所得が変動すると生活が成り立たなくなる。よって、リスク回避的になり、リスク中立的な社長がリスクを引き受けている。
双曲割引
何年先の価値かによって異なる時間割引率を使う方法のこと。
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・来年に10万円を借りて再来年に15万円を返済するローン契約を考える。今年の時点では来年の10万円の現在価値は6万円、再来年の現在価値は7.2万円なので、ローンは借りなかった。しかし、来年になると、結論が逆転する。翌年返済する15万円の価値は9万円なので、現在借りる10万円の方が価値が高いと判断する。
つまり、時間の経過に対して、一環した結論を持っていない。
こういった時間不整合な人は、多重債務者の傾向がある。
主観確率
人間の心の中のものさしで測ったもの。反対に大量のデータに裏付けられた物的な確率は客観確率という。
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株式市場では「カラ売り」という信用取引がある。予想が当たる限り、どちらでも儲かるため、本来、投資家は常に取引を実行するはずだが、実際には取引が閑散とする現象がおきる。
これは投資家は確率がわからない時には、悪い可能性が気になり、動こうとするとその方向が悪い方向に見えるという背景がある。