会社は誰のものか
会社は経営者や株主のものではない。その大小に関わらず、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業にかかわるすべての人々のものである。
会社には「五人に対する使命と責任」がある。この使命と責任を果たす行動を「経営」と定義している。
①社員とその家族を幸せにする。
②外注先・下請企業の社員を幸せにする。
③顧客を幸せにする。
④地域社会を幸せにし、活性化させる。
⑤自然に生まれる株主の幸せ
顧客を満足させる商品やサービスを創るのは社員である。よって社員の幸せが、1番大切である。会社は株主のものであるという議論があるが、株主の満足度は、上記の4人の満足度を高めれば、必然的に発生する。重要なことは、その会社が、私たちの心を打つようなことをやっているか、社員がやりがいをもって楽しく仕事に取り組めるかということである。
日本でいちばん大切にしたい会社
①日本理化学工業
社員の七割が障害者のチョーク製造会社。50年程前から障害者の雇用を行っている。「人間にとって生きるとは、必要とされて働き、それによって自分で稼ぎ自立すること」を信念に、その場を提供している。社員は社会の役に立っている、弱者の役に立っているという自負によって、モチベーションを高めている。
②伊那食品工業
48年間増収増益の寒天メーカー。「いい会社をつくりましょう、いい会社とは、単に経営上の数字ではなく、会社を取り巻くすべての人々が『いい会社だね』と言ってくださる会社のこと」を社是にしている。
伊那食品工業は、一度もリストラをしたことがない。同社の経営理念には「企業は社員の幸せを通して社会に貢献すること」と謳われており、次の3つの方針がとられている。
・無理な成長は追わない
・敵をつくらず、オンリーワンを目指す
・常に工夫し、未来に投資する
③中村ブレイス
島根県でも最も辺鄙な石見銀山の麓にある義肢装具メーカー。JR松江駅または出雲駅で乗り換え、大田市という駅で降り、そこからタクシーで山の中を20、30分入るという場所にありながら、多くの顧客や働きたい人がやってくる。
「ブレイス」とは「支える」という意味、つまり人を支えることを信念としている。世の中に本当に必要とされるものを作れば、景気は関係ない。弱者の声に耳を傾ければ、市場は開ける。
④柳月
北海道帯広のお菓子メーカー。「心と心をつなぐこと」を信念として、地域の人が幸せになるためのお菓子作りを行っている。
⑤杉山フルーツ
静岡県富士宮市にあるさびれた商店街にある果物店。顧客の立場に立つ姿勢が、顧客の心をとらえ繁盛している。「これはお客様の心を満たすだろうか」と問い、自分たちが食べて満足しない商品は売らない主義を通している。