●本書は、スポーツの勝ち負けは運による部分が大きいと考えられがちななかで、クラブ経営を戦略的に考えることで成功した、FCバルセロナの事例を元にしたものである。著者は2003年から2008年まで、FCバルセロナの最高責任者であったフェラン・ソリアーノ氏である。
・サッカーはグローバルビジネスとなっている。ただ、クラブごとに経営方針は異なっており、ブランド力を持ち、スター選手を集めて世界に向けて娯楽を提供するクラブ、地域住民へ向けての娯楽提供を目指すクラブなどなどクラブの経営方針をどうするかは大きい。
・クラブの永続的な成功はクラブの持つブランド価値にかかっており、そのためにどのようなブランドを訴求するか、ポジショニングを明確にすることが重要である。レアル・マドリードは「銀河系軍団」を目指したがうまくはいかなかった。
・FCバルセロナは、「クラブ以上の存在」という従来のスローガンを「全世界におけるクラブ以上の存在」として、スポーツと平和の価値を伝えていくことも掲げ、スポンサーとしてユニセフと契約するなど、首尾一貫性を重視することでどのようなクラブなのかを伝えていった。
・クラブの収益源は、スタジアム、テレビ放映権、マーケティングの大きく3つ。マーケティングとは、スポンサーからの広告収入が中心。サッカービジネス全体でとらえたときに、最も多くの取り分をもっていくのは選手であり、クラブは赤字経営も多い。
・FCバルセロナは戦略的に経営することで、2002-03シーズンは1億2,300万ユーロの収益であったが、2007-08シーズンには3億900万ユーロと約2.5倍となった。
・クラブの収益にとって重要な勝つためのチーム作り、監督・キャプテンのリーダーシップ、人材採用、そのための交渉術など多岐にわたって何を行ったのかが示されている。
・特に交渉においては、アングロ・サクソン系とラテン系の特徴が示されている。2006年にチェルシーにいたエイドゥル・グジョンセンを獲得した際は、ほとんどEメールでのやり取りで終わったが、エドガー・ダービッツとの契約は、電話で話すのも難しく出向いていって行ったことなどが一例。
・本書は、具体的な数値を示しながら展開されており、FCバルセロナの躍進が数値の面からもわかる点が特徴的である。