サムスンの意思決定が速い理由
①トップダウンよりボトムアップ
日本企業では、上層部の決定がなければ何も始められないトップダウン方式が多い。経営者に判断を依頼する調査や資料作成に時間がかかる。一方、サムスンの意思決定はボトムアップ方式であり、トップは将来的な方向性を示すだけで、短期スパンのことや細かいレベルの話は下の人間に任せられている。よって、グループ内の意思決定が速い。
②水平分業
自前主義にとらわれず、水平分業を採用することで生産プロセスを効率化している。この事で同時に多品種少量生産を実現し、新興国市場のニーズに応じて、いち早く製品を投入することができる。開発プロセスにおいても、意思決定をいかに速くできるかを考えている。
③設計・開発に関わるすべての情報を一元化
商品企画、デザイン、設計、製造、生産管理、資材、品質管理、営業、アフターサービスや部品メーカーに至るまで、すべての人が必要な情報をすべて見られるシステムを構築。開発期間を大幅に短縮している。
世界を制したサムスンの手法
①多品種少量生産
製品の基本モデルを作り、そこから各市場のニーズに応じて、機能を外したり、新たな機能を追加したりする。サムスンでは一年間に1000以上のモデルのテレビを出している。
②地域専門家
世界各地のニーズをしっかり把握するために情報収集に注力している。地域専門家と呼ばれる社員が6ヶ月から1年間、派遣先の国に滞在し、その国の習慣や現状を調査する。各地の情報を製品開発に活かしている。「相手の文化を知らずにものは売れない」という考え方をしている。
③顧客満足センター
ユーザーの要求や不平不満をちゃんと聞いて、商品開発に活かしている。つまり、世界各地のユーザーの視点でモノをつくっている。組織スリム化でアフターサービスを別会社で担当することもある日本企業との違いは大きい。
④R&Dは現地で行う
現地社会が要求するものをつくるためには、開発、設計、工場も現地に持って行くのが基本。社長もスタッフも全員現地の人たちとする方針がとられている。
⑤リバース&フォワード・エンジニアリング
技術は「開発設計(科学技術)」と「量産設計(産業技術)」に分けられる。サムスンでは、技術開発と開発設計には力を入れず、その部分は日本などの先行するメーカーの新技術をキャッチアップすることで補っている。
特定の製品を分解して、その構造や動作を分析しながら、まだ公表されていない製造方法や動作原理を調査することを「リバース・エンジニアリング」と呼ぶが、サムスンではこれに独自の新たな機能を付けたり、違った仕組みを設計・開発し、顧客に応じた製品を作っている。