ザッポスの立ち上げ
「アマゾンの靴バージョンを作り、世界最大のオンライン靴店をつくる」というアイデアは、最初はひどいアイデアだと思った。しかし、米国のフットウェア業界400億ドルの内、5%がカタログ通販ビジネスになっていることを調べ、ネット通販が同じようになることは想像できた。
当初のザッポスの資金繰りは厳しいものであった。2000年のドットコム株の暴落により、ベンチャーキャピタルからの追加投資も駄目になり、トニー・シェイは投資家としてでなく、起業家として、ザッポスに関わることになった。
ザッポスは生き残るために集中した。レイオフなどのコスト削減も行ったが限界があり、売上げを伸ばす方法で黒字化する必要があった。当初は注文が入った段階で、メーカーに転送する方法をとっていたが、これでは納品まで時間がかかり、在庫切れも多いデメリットがあった。
在庫を自社で持つには、倉庫を持ち、配送インフラを整え、在庫を抱えるリスクを伴ったが、結果として売上げは伸びた。
ザッポスの戦略
①時間、資金、経営資源を「カスタマー・サービス、企業文化、社員の教育と能力開発」という3つに集中投資した。この3つは他社から模倣されず、長期的な優位性になると信じた。
②広告にはほとんど費用をかけず、その費用をカスタマー・サービスと顧客体験に投資し、顧客のリピート率を高め、口コミによるマーケティング効果を狙った。
ex.
・365日返品可能。返品送料も無料
・コールセンターの電話番号をわかりやすく明示し、年中無休、24時間対応した
・自社で在庫切れの場合には、他社のサイトを調べ紹介した
カスタマー・サービスを浸透させる方法
・カスタマー・サービスを会社全体の優先事項に位置づける。
・「ワオ!」という驚き体験を届けることを意識させる。
・担当者に権限を与え、信頼する。
・マニュアルを使わない。
企業文化こそがブランドであり、競争優位の源泉である
長期的にブランドを構築するために最善の方法は「企業文化」である。企業文化をきちんと設定できていれば、素晴らしいカスタマー・サービスも、素晴らしいブランド構築も自然に始まる。
望むような文化を築き上げるのは、採用プロセスから始まる。採用面接の時に、すぐに売上に貢献できるような優秀な人でも、企業文化にフィットしない場合は採用しない。
採用後は皆、配属先や役職に関係なく、オペレーターと同じ研修を受ける。実際に顧客からの電話に対応する実地研修も行う。こうして、カスタマー・サービスを挙げて実行するということを全社員に浸透させる。